小売再生

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小売再生
出版社
プレジデント社

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出版日
2018年05月28日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

毎年11月11日の「独身の日」に中国で行われる大規模セール。中国のネット通販大手アリババがこの日に売り上げる数字が、大きな電光掲示板のうえで踊り狂っている。それはもの凄い勢いではね上がり、一向にとどまる気配を見せない。小売業者たちの心中を察して余りある。

またネット通販の代名詞アマゾンの快進撃に、撤退を余儀なくされた店舗も1つや2つではない。アマゾンは消費者がかつて店頭でしていた判断プロセスを、完全に消滅させてしまう勢いだ。しかも彼らは「ダッシュボタン」という小さなWi-Fi接続端末を通して、わたしたちの家庭にすら侵入しはじめている。このように圧倒的成長を見せつけるネット通販に、小売業者が立ち向かう術はないのだろうか。

もしあなたが小売の未来を思って青息吐息の状態なら、本書が天の助けとなるだろう。著者のいうように、残念ながら従来のかたちの小売が破滅への道をたどっているのは間違いない。しかし小売そのものが死ぬことは決してない。

いま小売の世界で起こっているのは未曾有の大転換だ。これまで実店舗の目的は物を売ることだったが、そのような時代は過ぎ去ろうとしている。時代の変化に対応できなければ、レッドオーシャンの藻屑となって消えてしまうだけだ。小売がこれから生き残る道を知りたければ、まずもって読むべき一冊である。

ライター画像
金井美穂

著者

ダグ・スティーブンス (Doug Stephens)
世界的に知られる小売コンサルタント。リテール・プロフェット社の創業社長。人口動態、テクノロジー、経済、消費者動向、メディアなどにおけるメガトレンドを踏まえた未来予測は、ウォルマート、グーグル、セールスフォース、ジョンソン&ジョンソン、ホームデポ、ディズニー、BMW、インテルなどのグローバルブランドに影響を与えている。本書のほかに、The Retail Revival : Re-Imagining Business for the New Age of Consumerism の著書がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    破滅への道を進んでいる小売業界は、これから歴史的大転換期を迎えようとしている。
  • 要点
    2
    小売の世界ではいま、商品購入プロセスの入り口で情報伝達を担っていた「メディア」が、商品配給の場になり変わっている。
  • 要点
    3
    ショッピングには人間性が反映される。求める商品との出会いだけでなく、思わぬ商品と出会える偶発性や、買いそびれるかもしれないという不安感の絶妙なバランスが肝要だ。
  • 要点
    4
    ミレニアル世代は体験志向である。もはや実店舗の目的は、商品販売ではない可能性がある。

要約

小売業界の破滅と新生

小売業界の未来予測
WendellandCarolyn/iStock/Thinkstock

「もう小売店は店をたたむしかないでしょう。みんなネットで買い物をすませるようになりますから」。

小売業界全体を敵に回しそうな率直な物言いをするのは、シリコンバレー屈指の投資家マーク・アンドリーセンだ。名だたるテクノロジー系企業に投資しており、トレンドを見通す眼力には定評がある。そんな彼の言葉がきっかけで、小売業界とネット通販専業事業者の未来をめぐる大論争が起きた。はたして小売は破滅へと突き進んでいるのだろうか。

アンドリーセンの意見に賛成する人々は、小売以外の業界も革新的な技術の進歩により深刻な影響を受けていることを指摘している。かつてビデオレンタル市場の約3割のシェアを占めていたブロックバスターは、いまではネットフリックスやビデオオンデマンドの勢力に押され、虫の息の状態だ。

新しいテクノロジーの影響は絶大であるにもかかわらず、こと小売業界では実に200年もの間、小売の概念やそのあり方に変化は訪れなかった。小売業者が商品を仕入れ、消費者がそれを購入するという基本的な仕組みが、1800年代中期から変わらず続いていたのである。

なぜ小売業者はこれほどまでに遅れを取ってしまったのだろうか。そして来るべき時代を乗り越えていけるのだろうか。著者の結論はこうだ。小売はこれから歴史的な大転換期を迎え、従来の小売は破滅へと突き進む。しかしそこから新たなスタイルが生まれるだろう。

ネット通販業界の躍進

アリババ事変

2016年11月11日、ネット通販業界に激震が走った。震源地は中国である。

毎年この日は中国では「独身の日」とされている。1993年に始まって以降、同日のお祭り騒ぎが定着するにつれて、小売業者が大型セールを実施するようになった。その火付け役が、中国のネット通販大手アリババグループである。

日付が変わって2016年11月11日が始まってから、1時間でアリババが売り上げた金額は、実に50億ドル(約5500億円)にもなった。1秒間に換算すると、約140万ドル(1億5400万円)だ。この日のアリババの最終売上金額は200億ドル(2兆2000億円)だったという。

このアリババが引き起こした大事件が、小売業界のネット通販に対する偏った考えを根こそぎひっくり返したことは想像に難くない。ネット通販業界はこのとき、新たな次元に突入したのだ。

さらにアリババは、ネット通販で致命的な弱点であった利益率も克服した。2013年3月期決算で粗利益率28.6%という数字をはじき出し、それ以降もおおむね30%台の粗利益率を維持している。

世界中でネット通販業界が毎年2桁成長を続ける一方、小売業界はどうにか1桁成長を維持するのがやっとの状況だ。

グーグルとアマゾンの攻防戦
Rainer Puster/iStock/Thinkstock

ネット通販の代名詞ともいえるアマゾン大躍進のとばっちりは、意外にもグーグルにまで及んでいる。

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要約公開日 2018.09.10
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