「マンガアプリ」と一言でいっても、さまざまなものがある。ここでは日本のマンガビジネスの現状と課題を理解するために、マンガアプリの機能を以下の4つに分類したい。それは(1)「他社作品の新作連載プラットフォーム機能」、(2)「ストア機能および他社作品の旧作連載プラットフォーム機能」、(3)「自社新作連載機能」、(4)「コミュニティ機能」である。
(1)「他社作品の新作連載プラットフォーム機能」とは、さまざまな出版社が作った新作マンガを連載することである。「版元横断」での「新作連載」(育成)が主な機能だ。代表的なサービスとしては「pixivコミック」や「LINEマンガ」、「マンガボックス」が挙げられる。これらのサービス事業者は、アプリ初出で連載できる新作を求めて、既存版元と協業している。
(2)「ストア機能および他社作品の旧作連載プラットフォーム機能」とは、旧作(既刊)を中心に、電子コミックを販売・レンタルすることであり、「LINEマンガ」や「マンガBANG!」が有名だ。こうした電子コミックストアが躍進した結果、ジャンルにもよるが、各社のマンガ売上の3~7割程度を電子版が占めるようになった。
(1)「他社作品の新作連載」が(2)「他社作品の旧作連載」ともっとも異なるのは、新作連載の場合はコミックス化されるまで、そのアプリでしか読めないことだ。だからプラットフォーム運営者は、「他では読めない」ことを武器に、ユーザーの獲得が期待できる。また作家や版元などの制作側からすると、掲載するプラットフォームに合わせて作品を作るので、紙雑誌連載の場合とはターゲットとなる客層が変わることもあるだろう。
さらに(3)「自社新作連載機能」とも共通するが、(1)の場合は紙雑誌連載時には得られない各種データ(アクセス数、読者の連載継続率など)を活用しつつ、スマホの小さい画面に最適化されたボーンデジタルのマンガを作ることになる。これも(2)との大きな違いだ。
(3)「自社新作連載機能」とは、アプリ事業者が自前で新作を作り、自社アプリに連載することである。小学館の「マンガワン」や集英社の「ジャンプ+」などが代表的なサービスだ。
自社の編集部が制作する新作マンガを自社アプリに掲載するのと、他社アプリに掲載するのでは、なにが違うのだろうか。作家や編集者にとっては、あまり大きな違いはない。どんな媒体であれ、多くの読者に届け、より多くの利益をめざすことは変わらない。また制作上の制約についても、他社媒体のほうが自社媒体より制約が大きいとはかぎらない。
だがアプリ事業者からすると大きな違いがある。どこがマンガの制作原価をもつかが変わってくるからだ。マンガは小説に比べると制作コストが大きく、オリジナルマンガを10本連載するだけで、年間億単位のカネがかかってしまう。
とはいえ電子書店事業で「売る」だけなら費用は軽いが、利幅も小さい。
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