アマゾンの2012年の売上高は610億ドル。利用者はますます増加している。1000億ドル突破も十分視野に入っており、今となってはその影響力は計り知れないほど強大なものとなった。
『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』という邦題の通り、いまやアマゾンが抱く野心はライバル会社を恐れさせている。ビジネス世界で「アマゾンされる」(To be Amazoned)と言えば、アマゾンによって「自社の従来型事業から顧客と利益を根こそぎ奪っていくのをなすすべもなく見る」という意味になるのだという。
アマゾンのアイデアが誕生したのは1994年。ウォールストリートの金融工学の会社で働いていたベゾスは、インターネットの成長率の高さに驚き、あらゆるものを販売する「エブリシング・ストア」を考案する。
最初からエブリシング・ストアを立ち上げるのは困難だと考えたベゾスは、20種類もの取扱商品の候補のなかから書籍を選んだ。書籍は差別化とは無縁の商品で、ユーザーが商品の質を気にすることなく買い物ができ、取次会社を使えばたくさんの出版社にひとつずつ当たる必要がない。さらには書籍のスーパーストア、バーンズ&ノーブルでも300万点以上に及ぶ書籍の全在庫を持つことは不可能で、オンラインでしか実現できない店舗を作ることができる。
退職してオンライン書店を始めるつもりだというベゾスは、所属していた会社のオーナーから強く慰留された。しかし起業を決断した背景には、遠い将来に人生の岐路をふり返ったときに「インターネットという、世界を変える原動力になると思ったものに身を投じなかった場合、あのときやっておけばよかったと心から後悔する可能性がある」という考えがあった。このエピソードはインターネット起業の伝説となっている。
1996年に入るころには、アマゾンの売上は月に30%から40%も伸びるようになっていた。成長速度はすさまじく、計画は役に立たないし、社員も当時のことをよく思い出せないほどだという。
同年の春には米国出版社協会の年次総会でオンライン販売が評判になっていると話題になり、その2~3週間後にはウォール・ストリート・ジャーナル紙の一面にアマゾンの特集記事が掲載される。
また、その夏にはアマゾンが生み出す最初のイノベーションが登場した。書籍を購入するようアマゾンに誘導すると、誘導したウェブサイトに紹介料が入る仕組みだ。承認サイトに対する紹介料率は8%。アマゾンのプログラムは、アフィリエイトマーケティングと呼ばれる何十億ドル規模の業界を生み出した。
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