ぱっと見たところ大成功のキャリアを歩んでいるように思える本書の著者、秋山ゆかり氏は、実は壮絶な人生を歩んでいる。最初の就職活動で200社以上もの会社を受けたが失敗し、エンジニアの中途採用に受かったものの、離婚により専業主婦の夢が破れ、会社の先輩とのトラブルで退職へ追い込まれる。
過度のストレスで入院し、どん底にいた著者は100人以上の伝記を読破し、「事業開発の専門家として20代で年収1000万円を稼ぐ」という目標を立てた。目標を実現するために必要なスキルは何かを考えた結果、BCGへ転職。社内で狙ったポジションを手にし、社内外で通用する「選択肢をつくる力」や「成果が出る勉強力」の身につけ方を学んでいく。
BCGを退職したあとは、ビジネスと声楽家のキャリアの両立を目指し邁進していたが、次に入社したSAPジャパンでは業績を上げていたにもかかわらず、社内政治に無知だったため3年の契約で退職を促されるという憂き目に遭った。この危機では、辛いことからも学びを抽出し、いち早く「危機からリカバリーする力」を得たという。
GEの事業開発部門の責任者になってからは、短期間でがむしゃらに結果を出すことを徹底し、「結果が出せる現場力」を磨いていく。そして日本IBMでは、人材価値を高めて「未来を創る進化力」を高めていった。
この要約では、どんな環境でもキャリアを進化させていくための5つの力を秋山氏がどのように身につけていったのかを紹介していこう。
自分の仕事が外注される、または職場が海外移転になる可能性がある現代においては、社内外での選択肢を生み出し、生き延びる必要がある。
それでは、どの業界・キャリアを選択すれば生き延びやすいだろうか。それは成長産業やニーズが見込める領域である。総合研究所が出している未来予測資料をリサーチし、どの業界が伸びるのかどうか仮説を用意することをお勧めしたい。著者が事業開発という領域を選んだ理由は、仕事が好きというだけでなく、国内外にニーズが見込めるという観点も含まれている。
次に、社内での生き延びやすさを高めるために、社内政治力を身につけることも大切だ。必要なスキルは、各部署の情報に精通することと、自分の得意分野をアピールする発信力をもつことだ。ただし情報収集で知り得た秘密については知らない素振りをしなければ、社内政治で大打撃を受けるおそれがあるので注意が必要である。
その上で、狙ったポジションを得るには、競争相手が少ないニッチな領域で自分の提供できる価値を高めなくてはいけない。自分が有利に立てる可能性が高くなるからだ。もし希望のポジションがなくても、その類似した業務を率先して行い、周囲の人が「このポジションがあった方がよい」と思うような状況をつくっておくと、希望が通りやすくなる。「自分のスキルが社外で通用するだろうか?」 そんな不安を払拭するには、ボランティアなどで本業のスキルを活かし、自分の能力が認められるかを検証するとよいだろう。
社会人の勉強における「時間の確保」と「継続」という課題をどう解決すればいいだろうか?
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