マーケティングとは決して「自社製品を売り込むテクニック」のことではない。顧客が何を欲しているかを見極め、適切なタイミングと価格で製品を提供することで、顧客のほうから「売ってください」という状況を意識的に作る。そうすれば売上は自ずとついてくるものだ。企業活動の源泉は売上であり、マーケティングは売上を伸ばすために欠かせない要素であるため、企業にとって重要な戦略であることは間違いない。
また、マーケティングには科学的な側面もある。すなわち、実験を通じた客観的データによって説明ができ、かつ再現性も有しているということだ。大企業であっても、まずは小さな実験を繰り返して、そこから得られた結果をよく検証し、確信が出来れば全社レベルでのマーケティングを行う。
例えばマクドナルドで行われたコーヒーの無料提供が成功したのは、まず特定の店舗で実験を行い、その効果を確信した上で全国展開したからであった。
マーケティングは「顧客に価値を伝えるプロセス」と言い換えることもでき、付加価値を生み出すための企業の活動を細分化したものを「バリューチェーン」と呼んでいる。原材料の購買や、それらの加工や配送といった主活動だけでなく、人的資源の管理や技術開発なども踏まえ、価値向上には全社レベルで取り組む必要がある。
ただし、全てのプロセスを自社で執り行う必要はない。限られた経営資源の中で自社の得意とするプロセスを強化し、それ以外はアウトソースすることで、価値を飛躍的に高めることができる。例えばアップルは製品の企画やデザインと、製造後のマーケティング活動は自社で行っているが、製造工程は外部委託している。
マーケティング戦略は現場よりの機能戦略である。しかし、より上位の概念である経営戦略や事業戦略との一貫性を持たないと逆効果にもなりうる。まずは会社としてのミッションやビジョンを前提とし、その達成の為にマーケティング戦略を策定するということを忘れてはならない。
全社レベル、事業部レベルの戦略計画を立てて、各事業の成長機会に基づいた資源配分を行い、それを事業単位、製品単位に落とし込んでいく。事業単位では、外部環境・内部環境の分析を踏まえた目標を設定し、どのようにその目標を達成するかという考えに基づいて戦略を策定し実行に移す。実行後も結果を検証し、適宜修正していくことが求められる。
本書ではCHAPTER 2以降、①調査⇒②セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング⇒③マーケティング・ミックス(4P戦略)⇒④実施という戦略実行のプロセスごとに解説がなされている。これらはサイクルとして回すことで、より精度の高いマーケティングを実現することができる。この要約では、各パートにおいて紹介されている概念の一部を紹介したい。
CHAPTER 2では、市場機会を特定し、誤った方向への投資を防ぎリスク回避を実現するための「情報収集とデータ分析」について述べられている。
まず取り組むべきは「マクロ環境の分析」だ。
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