マーケティングと一言で言っても、その範囲は非常に広い。企業はモノやサービスを消費者に提供し、対価としてお金を得るが、そのバランスをとるのは難しい。誰に、どんな製品を作り、どこで、どのように、いくらで売るか。それを細分化して考えていくのがマーケティングであり、企業活動のほとんどと言ってもよい。本書では、中でも「マーケティング業務」について述べることとし、「新商品開発」と「既存商品の育成」の二つに大別してその戦略・戦術について解説していく。
マーケティング業務には、企画・販売など一連の流れをトータルで考えるゼネラリストとしての仕事と、市場調査・分析などひとつひとつについて高い専門性を求められるスペシャリストとしての仕事がある。さまざまなマーケティング業務が時系列で進み、作用しあって一定のサイクルを作っていくのが、基本的な流れである。
新商品を開発するとき、その流れは大きく「戦略」と「戦術」に分けられる。戦略は、市場のどこをねらって、誰にどんなものを売るのかを「絞り込んで」いくこと、戦術は、それをどのように見せ、どこで、どうやって売るかを「肉付けする」ことだ。戦略には「企業環境の分析」「新商品コンセプト開発」「マーケティング基本戦略」の3ステップ、戦術には「ブランド・シンボル開発」「マーケティング・ミックス」「市場導入計画」の3ステップがある。それぞれについて詳しく見ていくこととする。
新商品開発を始めるにあたってまず考えるべきなのは、「どのフィールドで商品開発するか」と「どんな自社資産を活用するか」である。3C分析により、消費者、競合、自社の状況をとらえる。消費者の生活がどう変わるのか(PEST分析、GCS分析)。ねらう競合、避ける競合はどこか。自社はどんな強みをもてるか。これらを分析し、強み・弱み・機会・脅威をまとめる(SWOT分析)ことで、ねらうべき方向性が見えてくるはずだ。
次に、「どんな新商品を作るか」を考えるステップへと進む。新商品のコンセプトには、消費者の「ニーズ」と、自社の持っているノウハウや技術などの「シーズ」、そしてそれを具現化する「アイデア」を入れる。「ニーズ」はその名の通り消費者の欲求であるが、困り事としてすでに顕在化しているものから、潜在的なものや無意識のものまである。「シーズ」は商品の価値を上げたり、コストを下げたりするための技術やプロセスであり、他社との差別化を図るポイントでもある。
「ニーズ」と「シーズ」を満たす「アイデア」を出すときには、さまざまな発想法を使うとよい。たとえば、既存のアイデアやカテゴリーを組み合わせたり、増減したり、移転したりする「SCAMPER」と呼ばれる発想法や、それらを組み合わせた「アナロジー発想法」「ブルーオーシャン戦略」などがある。商品コンセプトがある程度出たら、複数案から絞り込むための調査や、受容度をはかる調査を行う。調査の方法にはグループ・インタビューやオフィステストといった定性調査と、会場調査や自宅利用調査といった定量調査がある。
続いて、売り出していく対象となる相手をリアルに想定できるよう、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を設定していく。
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