管理ゼロで成果はあがる

「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう
未読
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管理ゼロで成果はあがる
出版社
技術評論社

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出版日
2019年02月07日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

著者が代表を務めるソニックガーデンは、システム開発を行うエンジニア集団だ。この会社には、本社オフィスがない。管理職も部署も評価も、売上目標すらない。

その特徴を聞くと、個人あるいは数人で設立した会社が、単純なデータ入力や記事を書くような仕事だけを受けている姿をイメージするかもしれない。しかしソニックガーデンの社員35人は全員フルタイム勤務で、新卒採用もするし、教育にも投資するという。オフィスを構えるごく当たり前の企業と何ら変わらない部分も多いのである。

そんなソニックガーデンは、どのように組織をコントロールし、経営しているのだろうか。その疑問に答えをくれるのが本書だ。タイトルにある通り、「管理」はいらない。それでもお客さまに新しい価値を提供する創造的な仕事ができるどころか、むしろ効率的だ。そんなことが、本書をお読みいただくと理解できるだろう。

本書内で紹介されているソニックガーデンの実例については、システム開発の会社だからこそ可能な部分も多分にある。しかし管理をなくすことのそもそもの目的は、「組織として圧倒的な成果を出すこと」と「働く個人が圧倒的に楽しく仕事をすること」の両立だ。その実現は、組織として「高い生産性」を実現し、維持できてこそ可能となる。

この目的については、業界業種の違いはあまり関係ないだろう。同じ観点から自分の組織に対する問題意識をお持ちの方であれば、取り入れたいことがきっと見つかる一冊だ。

ライター画像
三浦健一郎

著者

倉貫 義人(くらぬき よしひと)
株式会社ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。1974年生まれ。京都府出身。
小学生からプログラミングを始め、天職と思える仕事に就こうと大手システム会社に入社するも、プログラマ軽視の風潮に挫折。転職も考えたが、会社を変えるためにアジャイル開発を日本に普及させる活動を個人的に開始。会社では、研究開発部門の立ち上げ、社内SNSの企画と開発、オープンソース化をおこない、自ら起業すべく社内ベンチャーを立ち上げるまでに至る。
しかし、経営の経験などなかったために当初は大苦戦。徹底的に管理する方法で新規事業はうまくいかないと反省。徐々に管理をなくしていくことで成果をあげる。最終的には事業を軌道に乗せて、その社内ベンチャーをマネジメント・バイ・アウト(経営者による買収)することで独立を果たして、株式会社ソニックガーデンを設立。
ソニックガーデンでは、月額定額&成果契約の顧問サービス提供する新しい受託開発のビジネスモデル「納品のない受託開発」を展開。その斬新なビジネスモデルは、船井財団「グレートカンパニーアワード」にてユニークビジネスモデル賞を受賞。
会社経営においても、全社員リモートワーク、本社オフィスの撤廃、管理のない会社経営などさまざまな先進的な取り組みを実践。2018年には「働きがいのある会社ランキング」に初参加5位入賞と、「第3回ホワイト企業アワード」イクボス部門受賞。
著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』(日本実業出版社)がある。
プログラマを誇れる仕事にすることがミッション。
「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。

本書の要点

  • 要点
    1
    生産性を高めるにはまず、業務を見直す「ふりかえり」を行う。さらに常日頃から「タスクばらし」で仕事を分解し、重要でない仕事を捨ててしまうことも大事である。
  • 要点
    2
    メンバー個人に「セルフマネジメント」の力があってこそ、管理をなくして成果をあげる組織を実現できる。
  • 要点
    3
    ホラクラシーの組織にすることで、社員たちの主体性が増し、生産性が向上する。その上で創造性が求められる仕事をするならば、評価や売上目標などの数字による管理も不要である。

要約

生産性を高める取り組み

「ふりかえり」でやり方を見直す
scyther5/gettyimages

生産性が低い、部下が育たない、ノウハウが共有されない――そうした問題で遅れた進捗を、残業によってカバーしている組織は珍しくないだろう。だが、それもいつかは破綻してしまう。残業ではなく、抜本的にやり方自体を見直していかなければならない。

著者が代表を務めるソニックガーデンでは、仕事のやり方を見直す「ふりかえり」の時間を設けている。「なぜ、問題が起きるようになったのか」「問題をそのままにしておくと再発してしまうかどうか」といった視点から、業務のやり方や仕事のやり方を見直す。これは「進捗が遅れているからスケジュールを見直そう」などという、今起きている問題について話し合うものではない。

ふりかえりは、むやみやたらと意見を出そうとしてもうまくいかない。コツは4つだ。

1つ目は、「KPT」というフレームワークを使うこと。KはKeep(良かったこと)、PはProblem(悪かったこと)、TはTry(次に試すこと)を指す。ホワイトボードを使い、この3つの領域をふりかえっていく。

2つ目は、とにかくまずは全員で、KとPを出し切ることだ。1人ずつの気づきが出されれば、それは個人のものからチームのものへと変わっていく。KとPを全員で共有したうえで、チーム全体でTを議論すればよい。

3つ目は、Tを精神論にはせず、具体的なアクションに落とし込むこと。たとえばTを「ミスしないように気をつける」とすると、それが達成できたかどうか確認できない。あとから検証できる、具体的なアクションにまで落とし込む。

4つ目は、週に一度、1時間のふりかえりから始めることだ。頻度を短くするほど早く方向修正できるし、修正する量も少なくてすむ。はじめのうちは1時間かかるかもしれないが、やがて短時間で終えられるようになるだろう。

このふりかえりは、一度きりで終わらせてはいけない。繰り返し仕事の進め方を改善していくことで、最も生産性の出るやり方を見つけられるだろう。また「自分たちの現場は自分たちで改善していく」という意識がチームに根付くはずだ。

「タスクばらし」で重要な仕事に集中する
BrianAJackson/gettyimages

仕事を大きい単位のまま扱っていると、タスクの進捗状況が見えにくくなったり、重要度の低いことに時間をかけてしまったりする。そこでやるべきなのが「タスクばらし」だ。これは、4つの工程から成る。

まず、その仕事における目的とゴールの確認だ。目的とゴールにつながらないことは切り捨ててしまおう。

次に、仕事をタスク項目に分解していく。ゴール達成に結びつかないタスクが見つかれば、それも切り捨てる。タスクが大きすぎないように、1つのタスクは30分~45分に分けよう。

次に、見積もりだ。タスクに取り掛かる前に、頭の中でシミュレーションしてみる。イメージできなければ、少し手を動かし、取っかかりを得よう。

最後に、重要さと見積もりを組み合わせて優先順位を決める。シンプルに上から取り掛かればいいように、優先順位は一列に決めておきたい。

こうして優先順位を付けたタスクは、終了条件も忘れずに付ける。そうしないと、どのタスクが終わり、どこまで進捗したのかが見えづらくなるからだ。

やる気を高める

生産性を上げ、仕事のクオリティを保つためには、メンバーのやる気も必要だ。だが「やる気を出せ」と言われて出せるものではないし、やる気は他人がコントロールできるものでもない。だからメンバーには、自分で考える必要がある仕事を用意し、その仕事に主体性を持って取り組んでもらうことが必要だ。誰にでもできる「作業」ではなく「仕事」をやってもらおう。

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要約公開日 2019.04.15
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