老後に備えた蓄え、という言葉があるが、現実の世界で老後の衣食の足しになるだけの財貨を蓄えておくのは容易ではない。そこで、契約を行い、老後に備えようと思えるほどの豊かさを享受できている「現在」に、持てる富のうちの幾分かを現在の富をもっと必要としている人に渡し、やがて老後の時期(「未来」)に返してもらうことを約束する。これが広義の「金融取引」である。
金融取引が普通の交換取引と違うのは、その開始から終了までの間に時間の流れがあることである。言い換えるならば、時間の流れのなかで取引を行うという点が金融という取引の本質とも言える。
金融取引において引き渡す現在の富と、契約により返してもらう未来の富との交換比率が「金利」であり、これはすなわち金融取引における「価格」であると言えよう。
現在と未来とを繋ぐという契約・取引の性質上、そこには不確実性(リスク)が存在し、そうした不確実性の下で取引を行うための対価が、「リスク・プレミアム」である。つまり、「リスク・プレミアム」とは、「金融契約時に支払われる不確実性への対価」である。
なお、モノではなくてカネで取引をする、要するに現在のカネを渡して未来のカネを受け取るという形で金融取引を行おうとすれば、モノとカネとの相対価格がどうなるかということにも金利は影響されるはずである。モノの世界とカネの世界との間で成立する価格のことを「物価」と言うが、そうした物価の変化、つまり物価上昇率に対する予想も金利を決める要素になる。
オランダ人が1602年に立ち上げたオランダ東インド会社が、組織設計上の新発明であり、株式会社の始まりとされている。この特色は、株主が「有限責任」であると明記されていたことである。これはつまり、株主たちは、会社の事業が成功したときはその利益を自分のものとするが、会社が債務を払い切れず倒産しても出資額が戻って来なくなるだけで、それ以上の財産上の責任を追及されないという制度である。
「有限責任」の逆は「無限責任」だ。すなわち、会社という仕掛けの中だけで債務を払い切れない時は、株主が会社に代わってその債務を支払うという仕組みである。ただ、この制度をとった場合、会社の株主が誰か(無限社員の資力)は会社にとって極めて重要となり、会社を清算することなく株主の持ち分を安定的に回収する(他の株主に譲渡する)ことは極めて難しくなってしまう。よって、会社を清算することなく長い期間に渡って会社を存続させるために、株主有限責任という制度は必要である。
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