誰かから「ちょっとした頼みごと」をされたとき、深く考えずに引き受けてしまうことはないだろうか。少し立ち止まって、どのくらいの頻度で断っているか、後になって引き受けたことを腹立たしく思うか、断ったことを後悔するかを考えてみよう。
著者がこれを考えてみたとき、講演や寄稿、短いインタビューなどの依頼を引き受けすぎていると気付いたそうだ。頼みごとのほとんどは事前の予想よりも時間がかかったが、引き受けたことによって生じる恩恵や利益は、関係者にもたらされるものも、著者にもたらされるものも少なかった。
人の頼みを断れない、この「好かれたい病」はどこからきているのだろうか。これは、動物の世界でも起こる「互恵的利他主義」と呼ばれる行動で説明することができる。チンパンジーは自分が獲物をとらえた際に、血縁関係がない仲間とでもそれを分け合う。別の機会に獲物を分けてもらえることを期待し、自分が獲物を取れなかったときの保険をかけているのだ。これは、以前どの仲間が分けてくれたかを記憶しておける動物ならではの行動パターンだ。
この行動パターンは人類にも受け継がれている。このおかげで私たちは、血の繋がりのない大勢の人と協力しあい、生活を豊かにするために経済活動ができているといえよう。
しかし、ここには落とし穴もある。それは、誰かから「好意」を受けるとお返しを義務のように感じて頼みを断れなくなってしまうこと、そして「お返し」を期待して相手の利益になるように進んで頼みを引き受けてしまうことだ。しかも、頼みごとの実現に必要な時間のことを考慮して引き受けていることは存外少ない。
「互恵的利他主義」に対抗するために、ウォーレン・バフェットのビジネスパートナーであるチャーリー・マンガーの「5秒決断ルール」を真似てみてはいかがだろうか。頼みごとをされたとき、その要求を受けるかどうかを5秒で検討するのだ。
5秒で決めると、ほとんどの場合、「ノー」という答えが導き出されるはずだ。「ノー」と言うことで、チャンスを逃しているような気持ちになるかもしれない。だがたいていの場合、断ったところでチャンスを逃したことにはならないはずだし、頼みごとを断られたからといって、すぐにあなたを「人でなし」などと決めつける人はめったにいないだろう。
私たちは、テクノロジーによって自分たちの生活がより効率化されていると信じている。たとえば自動車は、私たちの移動効率を上げてくれた。
だが、私たちの自動車の現実的な平均速度はどのくらいだろうか。
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