望ましい人材の要件は、時代における社会構造やテクノロジーによって規定される。20世紀においては、従順で論理的かつ、勤勉で責任感が強い人材こそが優秀だとされてきた。しかし、このような20世紀的な優秀さは、今後は「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくだろう。一方、「オールドタイプ」の対極として、自由で直感的、わがままで好奇心の強い人材、すなわち「ニュータイプ」が、今後は大きな価値を生み出し、豊かな人生を送ることになる。
いま問題となっているのは、これまで「オールドタイプ」が発揮してきた思考や行動によって、資本主義というシステムが生み出す問題が拡大再生産されているという点だ。例えば世界中で深刻化している「ゴミ」問題だ。これは、量的な向上を是とする「オールドタイプ」的な思考・行動が生み出した負の結果といえる。
「従来の望ましい人材要件=オールドタイプ」から「今後の望ましい人材要件=ニュータイプ」へ。このシフトを促している大きな社会の変化(メガトレンド)が6つ存在する。本要約ではその一部を紹介する。
私たちは「モノ」が過剰で、「意味」が貴重な時代を生きている。「モノ」はその過剰さゆえに、その価値を徐々に減少させていく。一方で、「意味」はその希少さゆえに価値を持つ。これが21世紀という時代の特徴だ。このような時代には、「役に立つモノ」を生産し続けようとするオールドタイプは、価値を失っていく一方である。そのかたわら、希少な「意味」を与えることができるニュータイプの価値はいっそう高まっていく。
「モノ」の過剰化は、「問題の希少化」という事態を生み出す。「モノ」が溢れかえる時代において、人々が不満・不便・不安を感じることは減ってきている。つまり、「問題が希少になってきている」のだ。
かつて高く評価された「問題解決者(プロブレムソルバー)」は、大きく価値を減損する。その一方で、まだ世の中の誰も気づいていない問題を見出し、それを解消する仕組みを提起する「課題設定者(アジェンダシェイパー)」は大きな価値を生むことになるだろう。
「モノの過剰化」「問題の希少化」というメガトレンドの掛け合わせは、「意味のない仕事の蔓延」という事態を引き起こす。イギリスの経済学者ケインズは、1930年に著した論文で、こう予言している。「100年後には、週に15時間働けば十分に生きていける社会がやってくる」
しかしこの予言は実現せず、私たちの労働時間は100年前とほとんど変わっていない。労働の需要が減少しているにもかかわらず、労働の供給量は変わらない。そのため、多くの人が意義や意味のない仕事、「虚業的労働」に携わらざるを得ないのだ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの社会人類学教授、デヴィッド・グレーバーはこれを「クソ仕事(Bullshit Jobs)」と呼んでいる。
ひたすら高い生産性と量的成果を追求するオールドタイプは、無意味な仕事の泥沼に陥っていく。対して、仕事の目的・意味を形成し、仕事の価値を言語化・構造化できるニュータイプは、大きな価値を生み出していく。
ニュータイプは、手段としてのイノベーションや技術にはこだわらない。「課題の設定とその解決」にフォーカスを絞る。
いたずらに先端的なテクノロジーを追い求めても、イノベーションを起こせない。それを示す典型例が、電動二輪車のセグウェイだ。21世紀の初頭において「世紀の大発明」といわれ、鳴り物入りで市場に登場したにもかかわらず、売上は冴えなかった。
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