数学×思考=ざっくりと

いかにして問題をとくか
未読
数学×思考=ざっくりと
数学×思考=ざっくりと
いかにして問題をとくか
著者
未読
数学×思考=ざっくりと
著者
出版社
丸善出版
出版日
2014年04月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

未知の問題に出会ったときにどのように考えるべきかという道筋を示した、数学者ポリアの『いかにして問題をとくか』(丸善出版)。1954年に刊行されたこの本は、数学への興味を深めてくれる良書としてロングセラーを続けているという。

この『いかにして問題をとくか』の考え方を、文系読者やビジネスパーソンにもわかりやすい内容にして記したのが本書『数学×思考=ざっくりと』である。少し不思議な感じを受けるタイトルだが、難問に直面したときであっても「ざっくり」とした数学的思考をすることで道を開くことが出来る、ということを指したものだ。新商品の市場規模を予測するのに使えるフェルミ推定に始まり、米グーグルの入社試験問題でも必要となるスケール感覚や、データ分析で有効となる最小二乗法など、ビジネスに使える思考法の数々を教えてくれる。

本書と『いかにして問題をとくか』に共通しているのは、考えることの楽しさを再認識させてくれる点であろう。特に本書では数式は最小限にとどめて軽快な文体で書かれており、数学からしばらく遠ざかっていた方でも問題なく読み進めることができる。事例も実践的なものから数学の奥深さを知れるものまで幅広く、知的エンタテイメントとしての完成度や満足度はかなり高いと感じた。通勤途中にスマートフォンでニュースを見たりゲームばかりしている方にこそ、ぜひこの面白さを実感していただきたい。

ライター画像
苅田明史

著者

竹内 薫
サイエンス作家。1960年生まれ。東大卒。マギル大学大学院修了(理学博士)。「サイエンスZERO」(NHK Eテレ)、「たけしのコマ大数学科」(フジテレビ系)などに出演。主な著書に『99・9%は仮説』(光文社新書)、『宇宙のかけら』(講談社)、『シュレディンガーの哲学する猫』(中公文庫)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    正確でなくともざっくりとした数字的規模を把握したい場合、いくつかの手がかりになりそうなデータを元に論理的に推論する「フェルミ推定」が有効である。
  • 要点
    2
    スケールを問う問題に直面した場合、実際の大きさや長さを考慮した図を描いてみたり、運動方程式に当てはめて計算してみたりすることで、物の見方が変わり、これまで見えていなかった実体が見えることがある。
  • 要点
    3
    モンティ・ホール問題に代表されるような確率計算は、直感に基づいたものと数学的に厳密に計算したものでは結果が全く異なる場合があるため、問題における条件や概念をすべて考慮できたか確認することを忘れてはならない。

要約

【必読ポイント!】 フェルミ推定でざっくりと

「フェルミ推定」とは何か?

会議で議論をしているときに、その場で厳密に計算をしはじめると時間がかかりすぎて、議論が中断してしまう。そうならないよう、議論している事象の数字的な規模を概算する際に有効なのが「フェルミ推定」だ。以前は物理学系や工学系の研究所や工場などでよく使われていた見積もり方法だったのだが、近年では企業の入社試験に使われるようになったことをきっかけに、ビジネスシーンでも重宝されるようになってきた。

たとえば新商品開発について議論するとき、購入してくれるユーザー数をその場で正確に求めることは難しいが、おおまかに10万人とか100万人といった推定を行うことができれば十分に有効な数値となる。なかには競合他社がすでに進出していることを加味して見積もらなくてはいけないものもあるだろう。いくつかの手がかりになりそうなデータを元に論理的に推論し、短時間でざっくりと計算することを「フェルミ推定」という。

シカゴにはピアノ調律師が何人いるか?
Petermooy/iStock/Thinkstock

「フェルミ推定」は放射性元素を発見して1938年にノーベル賞を受賞した、物理学者エンリコ・フェルミに由来する。フェルミの有名な問題の一つに「シカゴにはピアノ調律師が何人いるか?」というものがある。当時のシカゴの人口はおよそ300万人と仮定して、この問題を考えてみよう。

まず考えなくてはならないのは家の戸数だ。なぜならピアノは1軒に1台、という考え方が一般的だからである。ここでは一世帯当たりの人数が3人と仮定しておこう。

次にピアノの所有割合について考えてみよう。自分のまわりを見回してみると大体10世帯に1台くらいの「桁」でピアノを所有していることがわかる。

では、いったいどれくらいの頻度でピアノを調律するのだろうか。ピアノを持っている人であれば分かるだろうが、ピアノは1年に1回、多くても2回調律する程度である。調律には時間がかかり、1日に調律できるピアノの数はせいぜい3台が限度だ。また、ピアノの調律師は毎日働くわけではないので、週休2日として年間250日働くものと仮定しよう。

こうした諸々のデータが頭の中に用意できたら、次はこれらを組み合わせて計算していく。

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要約公開日 2014.06.17
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