五輪書 わが道をひらく

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五輪書 わが道をひらく
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2019年06月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

江戸時代の剣豪として広く知られる宮本武蔵は、長年にわたる武者修行によってたどり着いた、自身の兵法の奥義を書き残していた。それが『五輪書』である。本書では、そんな『五輪書』の原文に読みやすい現代語訳を加え、現代のビジネスの視点から考察を試みている。

『五輪書』は「地(ち)」「水(すい)」「火(か)」「風(ふう)」「空(くう)」の5巻からなり、宮本武蔵の最晩年に熊本の山中の洞窟で書かれたとされている。「地」の巻では全体の構成や道の学び方が示され、「水」の巻には心のもちかたや身体の構え、身のこなし、実践的な戦術などが書かれている。「火」の巻では先手のとりかたや戦うときの心がけが、「風」の巻には他の流派との違いが分けて示される。「空」の巻は、全体のまとめとも言うべき巻だ。

宮本武蔵は知らない人を探すほうが難しいほどの伝説的人物だが、その著作である『五輪書』を読んだことのある人は意外に多くないのではないだろうか。吉岡一門や佐々木小次郎との決闘を筆頭に、さまざまなエピソードが語られ、いまも人々を魅了し続けている宮本武蔵。その思想の集大成をこの機会にぜひ吸収していただきたい。磨き抜かれた思考は、古びることなく輝きを保っている。これを身につけることができれば、現代を生き抜くための頼れる武器となってくれるに違いない。

著者

前田 信弘(まえだ のぶひろ)
経営コンサルタント。高校講師、専門学校教員を経て独立。長年、経営、会計、金融、マーケティングなど幅広くビジネス教育に取り組むとともに、さまざまなジャンルで執筆・コンサルティング活動を行う。あわせて歴史や古典などをビジネスに活かす研究にも取り組んでいる。著書に『コンテンポラリー・クラシックス 武士道 ぶれない生きざま』『コンテンポラリー・クラシックス 韓非子 人を動かす原理』『君の志は何か 超訳 言志四録』(日本能率協会マネジメントセンター)、『知識ゼロからのビジネス韓非子』『知識ゼロからのビジネス論語』『知識ゼロからの孫子の兵法入門』(幻冬舎)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    宮本武蔵は生涯にわたって兵法の道を探求し続けた。その奥義を記したのが『五輪書』である。『五輪書』では、兵法を5つの道に分け、「地」「水」「火」「風」「空」の5巻として書きあらわされている。
  • 要点
    2
    重視すべきは敵を斬るという目的であって、手段にとらわれてはならない。細かな技巧は問題ではなく、剣術の真の道とは、敵と戦って勝つことである。
  • 要点
    3
    何事も速くしようとすれば、拍子の間が合わず、はずれてしまう。相手がむやみに急いでいるときには、あえて静かに構え、相手に引きずられないようにすることが大切だ。

要約

宮本武蔵の生涯

『五輪書』を書き上げるまで
anandaBGD/gettyimages

宮本武蔵(以下、武蔵)の生涯には、謎も多い。一説によれば、戦国時代の末期に岡山県北東部あるいは兵庫県南部に生まれ、13歳のころから兵法者と命懸けの勝負をしていたという。

21歳のときに京へ上った武蔵は、天下の兵法者と勝負を重ね、すべてに勝利する。中でも足利将軍家の兵法師範であった吉岡一門との戦いで、その名を轟かせることになった。その後も諸国を回りながら武芸者と勝負をし、武者修行を続けていった。

武蔵は20代の最後に佐々木小次郎と勝負することになる。関門海峡の無人島の舟島(のちの巌流島)で、小倉藩の兵法師範だった小次郎を一撃のもとに倒すのである。

1640年、59歳で肥後熊本の細川家の客分となった武蔵は、以後没するまでこの地で過ごした。1643年の秋には霊厳洞にこもって『五輪書』を書き始めたが、約1年後に病に倒れる。手厚い看護を受けたものの、1645年の春、『五輪書』を書きあげて間もなく息をひきとった。

「地」の巻

わが流派を二刀流と名づけること

『五輪書』は兵法を5つの道に分け、「地(ち)」「水(すい)」「火(か)」「風(ふう)」「空(くう)」の5巻として書きあらわしたものだ。要約では、「地」「水」「火」「風」「空」それぞれの巻の中から、いくつかの項目を取り上げる。

地の巻においては、兵法の道のあらましや、武蔵の流派の見かた・考えかたを説いている。兵法におけるまっすぐな道の地ならしをすることになぞらえ、地の巻と名付けられた。

二刀流と称するのは、武士は将も下級の兵士も二刀を帯びるのがつとめだからである。この二刀の長所を世に知らしめるために、その兵法を二天一流と呼ぶ。

二天一流では、初心者でも太刀・刀を両手にもって修練する。長い刀でも勝ち、短い刀でも勝つ。どんな武器でも勝てるという精神を身につけなければならない。

兵法における拍子ということ

何事にも拍子があるものだが、特に兵法では拍子を大切にする。

まず自分に合う拍子、合わない拍子を見極めることだ。さらに、相手の拍子にさからうことを知らなくてはならない。戦いにおいては、敵の拍子を知ったうえで、敵の予想外の拍子をもって、知略によって目に見えない「空の拍子」を生み出して勝つのである。

「水」の巻

太刀のもちかたのこと

第2は、水の巻である。水は器にあわせて形をかえ、一滴ともなり、また大海ともなる。そんな水の清らかさを心に抱いて書かれたのが、水の巻だ。

太刀をもつときは、親指と人差指をやや浮かすようにし、中指はしめず、ゆるめず、薬指と小指をしめるようにする。太刀をもった手の中にゆるみがあるのはよくない。常に「敵を斬る」という思いでもつべきである。試し切りであっても、実際の戦いであっても、同じことだ。

太刀をどう使うにせよ、固まってしまってはならない。凝り固まるのは「死」の手であり、そうしないことが「生」の手である。

有構無構の教えのこと
Zeferli/gettyimages

「有構無構」――構えがあって構えがない――とは、太刀を型にはめて構えるべきではないということだ。太刀は、敵の出かたや場所、状況に応じて、敵を斬りやすいように持つものである。

上段の構えも少し下げれば中段となり、中段も少し上げれば上段となる。構えというものはあってないもので、とにかく敵を斬ることが重要だ。きまった形にとらわれてはいけない。

「火」の巻

序文

第3は、火の巻である。この巻には戦いのことが記されている。火は大きくなったり、小さくなったりしつつ、すさまじい勢いをもつものだ。火の巻では、戦いのことをそんな火のありようになぞらえて書いている。

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要約公開日 2019.11.01
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