オリジン・ストーリー

138億年全史
未読
オリジン・ストーリー
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138億年全史
未読
オリジン・ストーリー
出版社
出版日
2019年11月14日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

私たちはどこから来たのだろうか。人間は太古から問い続けてきた。それを語る神話や物語は枚挙にいとまがなく、世界中にバリエーションが存在する。しかし、この根源的な問いに答えるにあたって、我々はもはや神話には頼れない。我々が頼るのは科学だ。本書は、冒頭の問いに科学をベースにして答える、現代人のための「オリジン・ストーリー(万物の起源の物語)」だ。

本書が他と違う点は、単に歴史を追うだけでなく、人類、あるいは生物や宇宙が次の段階に進むために必要とした変化やイノベーションは何かを問う点にある。例えば生物が繁栄への道を歩んだ第一歩は「光合成の獲得」であった。「オリジン・ストーリー」とは「なぜ?」を問い続ける物語である。なぜ宇宙は存在するのか。なぜ生命は誕生したのか。なぜ人類はサルとは違う道を歩んだのか。本書はこれらの問いに豊かな学識をもって答えを提示しており、知的好奇心が刺激される。

本書は、これまでの歴史をたどった上で、最終的に宇宙の遠い未来へも思いを馳せる。この物語の中では人類の歴史はおろか、宇宙そのものの発生も、ほんの一瞬の時間にすぎない。壮大なスケールで描かれる、途方もない物語に圧倒される。今の自分の存在や悩みなどどうでもよくなりそうだ。

自然科学的に興味を持つ人はもちろんだが、忙しい現代の毎日に疲れた人にも勧めたい。しばし頭と心を休めて、果てしない物語に身をゆだねてみてはどうだろうか。

ライター画像
池田明季哉

著者

デイヴィッド・クリスチャン
1946年アメリカ生まれ。オックスフォード大学でPh.D.を取得(ロシア史)。1975年からオーストラリアのマッコーリー大学で、2001年から2008年までアメリカのサンディエゴ州立大学で、教鞭をとる。現在は、マッコーリー大学教授および同大学ビッグヒストリー研究所所長。ビックバンから現代までの歴史を一望する「ビッグヒストリー」を提唱、マイクロソフト社創業者ビル・ゲイツとともに「ビッグヒストリー・プロジェクト」を立ち上げ、一躍注目を集める。2005年、『Maps of Time』で世界歴史学会著作賞を受賞。2010年、国際ビッグヒストリー学会を設立、初代会長をつとめる。おもな邦訳書に『ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか』(共著、明石書店)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書は、宇宙の誕生から始まる138億年の歴史を、複雑さをしだいに増すプロセスととらえ、より複雑なものが現れたとりわけ重要な変わり目を、「臨界」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    宇宙の誕生は第一の「臨界」であり、ビッグバンの猛烈なエネルギーにより原子が生まれ、物質が生まれた。やがて恒星と銀河が誕生した。
  • 要点
    3
    人間の登場は、オリジン・ストーリーの中でも大きな事件となった「臨界」だ。人間とサルを分けたのは「言語の獲得」であった。これにより人間は「集合的学習」が可能になり、知識の蓄積により複雑な社会を形成していった。

要約

歴史は複雑さを増すプロセス

8つの「臨界」

本書は、宇宙の誕生から始まる138億年の歴史を、複雑さをしだいに増すプロセスととらえる。宇宙がエネルギーの広大な海から出現したときは、きわめて単純であり、宇宙のほとんどの空間は今も単純なままである。しかし、地球の表面のように特別な条件がそろった環境では、さまざまなものや力や生きものたちが複雑さを増しながら生まれた。

より複雑なものが現れたとりわけ重要な変わり目を、本書は「臨界」と呼び、これまでに8つの「臨界」があったと考える。「臨界」は、ちょうどよい程度が整った状態、つまり「ゴルディロックス条件」を満たした状態でのみ訪れた。要約はいくつかの「臨界」を中心としてまとめる。

宇宙

何から始まったのか?
bkindler/gettyimages

宇宙の誕生は、第一の劇的な「臨界」であった。

宇宙の始まりの話を「どこから始めるのか」は難問だが、本当に「何もなかった」状態を「始め」として、ビッグバンを宇宙の起源とするのが今日もっとも広く受け入れられている。ビッグバンの直後には、固有の存在物あるいはエネルギーが生まれた。そしてエネルギーそのものが相転移し、「重力」「電磁気力」「強い核力」「弱い核力」の4種類に分かれた。

ビッグバンから1秒以内には物質が現れた。物質とは著しく圧縮されたエネルギーである。最初の構造や形状がどのようにして出現したのかは、いまだはっきりとわかっていない。ただ、少なくともそれらとともに、現在わかっている物理法則のような作動規定も出現した。そうして、「ありえない状態」が絶えず排除されたおかげで、最初の構造の出現は保証されたといえる。

ビッグバンから数秒後には原子の基本構造である中性子と陽子と電子、さらには陽子と電子の反粒子が現れ、物質と反物質を形成した。宇宙の温度が下がるにつれて物質と反物質は互いを消滅させ合い、残った物質は多様化していった。やがて陽子と中性子が結びつき、水素やヘリウムなどの原子が生まれた。

恒星と銀河の出現

ビッグバンの猛烈なエネルギーにより、陽子や電子のような構造が生まれたが、このときのような高温が生まれることはその後なかったので、これらは安定した存在となった。

物質は非ランダムなエネルギーの流れによって一体性を保っている。方向性や構造や一貫性があって仕事を行なえるエネルギーは「自由エネルギー」、完全にランダムなエネルギーの流れは「熱エネルギー」と呼ばれる。

自由エネルギーが原動力となり、単純な形態の物質が重力によって集められ、最初の大きな構造である恒星と銀河が出現した。つまり、物質と重力がゴルディロックス条件を提供し、恒星と銀河の誕生という「臨界」を生じさせたと考えられる。重力によって無理やり集められた原子は頻繁に衝突し、多くの熱を生んだ。それにより、宇宙の大部分が冷え続ける中、物質が密集した部分は再び温度が上がり始めた。重力によって圧力が上がると、密集部分の密度はさらに高まり、中心部の温度が上がっていった。そして陽子が融合するとき、すなわち核融合が起きるときに発生する莫大なエネルギーが恒星を生んだ。

恒星は、エネルギーを生み出し続けなければ潰れてしまう。天体物理学者チェイソンが指摘しているように「複雑な現象ほど濃密なエネルギーの流れを必要とする」のだ。これはオリジン・ストーリーを貫く考えであり、現代の人間社会についても示唆的である。

恒星は何千億も生まれ、これらが集まり、銀河が発生した。始めは水素とヘリウムしかなかった元素にも、様々なバリエーションが生まれた。

生物圏

目的意識の出現
smirkdingo/gettyimages

すべての「臨界」のうちでもとくに根本的なものが、生命の出現だ。生命は40億年近く前に、原始の地球の元素が豊富な環境で生まれた。生物の大群は長い時間をかけて地球の様相を変え、生物圏を生み出した。生物圏は、生物と、生物によって形成されたり、変えられたりしたものすべてから成る地球の表面の薄い層を指す。

細胞はひたすら自分の複製をつくり続ける。ひとつの世代から次の世代へと続いていくこの営みには、まるで「目的意識」があるように感じられる。目的意識の出現というのは、あるいは錯覚かもしれない。だが、恒星や銀河、宇宙にはこうした特徴はない。ただ法則を受け入れて存在しているだけだ。しかし生物は、

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要約公開日 2019.11.14
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