今後、日本は激変期に入る。私たちはその変化を先読みし、備えていかなければならない。そのためには人口減少や少子高齢化が進行する度合いが、地域によって異なるということを知っておく必要がある。
人口動態の影響を受けやすい地方ほど、厳しい現実が待ち受けている。全国一律で対策を考えてしまうと、間違いなく日本は地方から立ちゆかなくなるだろう。地域ごとに対策を考えるためには、ほかの地域の実状を知り、補完関係をつくっていくことが必須だ。
これはビジネスでも同じである。地域差を理解し、その差に目をつける。そうすることで日本社会を豊かにしていく術や、新たな成長の可能性を見つけられるはずだ。
人口減少の地域差が拡大する要因は2つある。1つ目は地域内の出生率が減少すること、2つ目は若者の大都市への流出である。ここからは、さまざまな地域や都市の現状のなかから、東京圏と関西圏を紹介する。
人口動態を確認するうえで、まず注目すべきなのが東京一極集中という現象である。政府の歯止め策も空しく、こうした動きは拡大し続けている。総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(2018年1月1日現在)」によると、2017年に日本人住民が増加したのは、7万4996人増となった東京都をはじめ、埼玉県、神奈川県、沖縄県、千葉県、愛知県の6都県のみだ。このうち沖縄県と愛知県以外はすべて東京圏である。一方で全国の自治体の72.1%では、人口が流出している。まさに各地から東京圏へ集まってきている状況といえる。
これを年代別・男女別に分析すると、若い世代が東京圏に集まっていることが明確になる。日本人に限ると、20〜24歳がもっとも多く、7万4996人(男性=3万3481人、女性=4万1515人)だ。若い女性が東京圏に流失してしまった地方では、出生率を改善する方法がない。
基本的に著者としては、東京一極集中は是正された方がよいと考えている。地方が極端に衰退すれば、東京圏の暮らしは成り立たなくなってしまうからだ。ただし東京一極集中を是正するのは容易ではない。現実的に考えると、東京一極集中を前提としつつ、戦略を考えていく必要がある。たとえば東京圏をまったく別の動きを見せる「外国」と位置づけ、非東京圏では人口が減っても成り立つ仕組みをつくることで、共存の道を探っていくべきだ。
日本は東京圏、関西圏、名古屋圏の三大都市圏を中心に発展してきた。東京一極集中の現状においても、関西圏や名古屋圏が世界規模の都市圏であることに変わりない。しかし人口動態の変化は、こうした大都市圏の在り方まで変えていく。三大都市圏がいつまで維持できるかは未知数だ。なかでも関西圏は、衰退の予兆が見え始めている。
総務省のデータから各地の人口動態を見てみると、総人口の変動は東京圏が前年比で15万7772人増(0.43%増)、名古屋圏がほぼ横ばい、関西圏が3万6569人減(0.2%減)であった。
関西圏の人口減少の要因としては、転出超過になっていること、企業が東京圏に移転していることが挙げられる。ここで注目すべき点は、関西以外で生まれた人の割合が30代と40代で相対的に小さくなっていることだ。地方圏の出身者の引っ越し先として、関西圏に目が向けられなくなってきているのである。これは関西圏を飛び越えて、東京圏に向かう流れができていること、各地域に周辺の人口を集める大都市が登場してきたことを意味している。
ここからは、日本で少子高齢化や人口減少の影響がどのように広がっていくかを、時系列に沿って分析していく。
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