未来の地図帳

人口減少日本で各地に起きること
未読
未来の地図帳
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人口減少日本で各地に起きること
未読
未来の地図帳
ジャンル
出版社
出版日
2019年06月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本の人口減少の実態を解き明かしたベストセラー『未来の年表』、その著者の最新作がこちら。本書では人口減少を迎えた日本列島が、どのような変貌を遂げるかが明らかになる。

政府の統計・推計データによると2018年、日本の人口は44万8000人減を記録した。40年後、日本の人口は9000万人を下回り、現在より3割ほど少なくなるという。日本は人口減少に向けてアクセル全開、というのが実状だ。現時点では、すでに過疎化に悩む自治体もある一方で、人口が増えている自治体も存在する。しかし今後は、このような地域差がより明確に表れてくる。全国一律で捉えてしまうと、こうした実態を見誤ってしまいかねない。

本書を読めば、人口減少によって三大都市圏、政令指定都市、地方都市などの地域が、いつ・どのような形で影響を受けるのか明らかになる。そこで著者が示そうとしているのは、まさにいままで見たこともない「未来の地図帳」だ。そのうえで注目したいのが、今後は既存自治体の枠組みにとらわれず、もっと狭いエリアごとに「ミニ国家」(王国)をつくるべきという著者の提言である。「王国」が無数にあるような「ドット型国家」への移行こそ、日本が人口減少下でも豊かさを維持できる唯一の策だという。

変貌する社会と地域を俯瞰することは、今後のビジネスチャンスを掴むうえでも不可欠だ。日本の行く末を理解するうえで欠かせない一冊である。

ライター画像
木下隆志

著者

河合 雅司(かわい まさし)
1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授のほか、日本医師会総合政策研究所機構客員研究員、産経新聞社論説委員、厚労省や農水省などの有識者会議委員も務める。中央大学卒業。2014年の「ファイザー医学記事賞」大賞をはじめ受賞多数。主な著作にベストセラー『未来の年表』『未来の年表2』(ともに講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)、『未来の呪縛』(中公新書ラクレ)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人口減少も少子高齢化も全国一律に進行するわけではない。地域差を認識することが不可欠である。
  • 要点
    2
    東京一極集中に歯止めはかからない。ならば東京圏を「外国」と位置づけ、非東京圏については人口が減っても成り立つ仕組みにすることで、共存の道を探っていかなければならない。
  • 要点
    3
    いま求められているのは、住民の自立性が高い拠点「王国」を整備することである。王国が無数にあり、それらを地図に落としこむと点描画になるような「ドット型国家」に、日本は移行するべきだ。

要約

現在の地図帳

地域差を正しく理解する
AH86/gettyimages

今後、日本は激変期に入る。私たちはその変化を先読みし、備えていかなければならない。そのためには人口減少や少子高齢化が進行する度合いが、地域によって異なるということを知っておく必要がある。

人口動態の影響を受けやすい地方ほど、厳しい現実が待ち受けている。全国一律で対策を考えてしまうと、間違いなく日本は地方から立ちゆかなくなるだろう。地域ごとに対策を考えるためには、ほかの地域の実状を知り、補完関係をつくっていくことが必須だ。

これはビジネスでも同じである。地域差を理解し、その差に目をつける。そうすることで日本社会を豊かにしていく術や、新たな成長の可能性を見つけられるはずだ。

人口減少の地域差が拡大する要因は2つある。1つ目は地域内の出生率が減少すること、2つ目は若者の大都市への流出である。ここからは、さまざまな地域や都市の現状のなかから、東京圏と関西圏を紹介する。

東京圏:東京一極集中

人口動態を確認するうえで、まず注目すべきなのが東京一極集中という現象である。政府の歯止め策も空しく、こうした動きは拡大し続けている。総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(2018年1月1日現在)」によると、2017年に日本人住民が増加したのは、7万4996人増となった東京都をはじめ、埼玉県、神奈川県、沖縄県、千葉県、愛知県の6都県のみだ。このうち沖縄県と愛知県以外はすべて東京圏である。一方で全国の自治体の72.1%では、人口が流出している。まさに各地から東京圏へ集まってきている状況といえる。

これを年代別・男女別に分析すると、若い世代が東京圏に集まっていることが明確になる。日本人に限ると、20〜24歳がもっとも多く、7万4996人(男性=3万3481人、女性=4万1515人)だ。若い女性が東京圏に流失してしまった地方では、出生率を改善する方法がない。

基本的に著者としては、東京一極集中は是正された方がよいと考えている。地方が極端に衰退すれば、東京圏の暮らしは成り立たなくなってしまうからだ。ただし東京一極集中を是正するのは容易ではない。現実的に考えると、東京一極集中を前提としつつ、戦略を考えていく必要がある。たとえば東京圏をまったく別の動きを見せる「外国」と位置づけ、非東京圏では人口が減っても成り立つ仕組みをつくることで、共存の道を探っていくべきだ。

関西圏:三大都市圏で減少スピードがもっとも速い
ferrantraite/gettyimages

日本は東京圏、関西圏、名古屋圏の三大都市圏を中心に発展してきた。東京一極集中の現状においても、関西圏や名古屋圏が世界規模の都市圏であることに変わりない。しかし人口動態の変化は、こうした大都市圏の在り方まで変えていく。三大都市圏がいつまで維持できるかは未知数だ。なかでも関西圏は、衰退の予兆が見え始めている。

総務省のデータから各地の人口動態を見てみると、総人口の変動は東京圏が前年比で15万7772人増(0.43%増)、名古屋圏がほぼ横ばい、関西圏が3万6569人減(0.2%減)であった。

関西圏の人口減少の要因としては、転出超過になっていること、企業が東京圏に移転していることが挙げられる。ここで注目すべき点は、関西以外で生まれた人の割合が30代と40代で相対的に小さくなっていることだ。地方圏の出身者の引っ越し先として、関西圏に目が向けられなくなってきているのである。これは関西圏を飛び越えて、東京圏に向かう流れができていること、各地域に周辺の人口を集める大都市が登場してきたことを意味している。

【必読ポイント!】未来の地図帳

塗り替えられてゆく未来

ここからは、日本で少子高齢化や人口減少の影響がどのように広がっていくかを、時系列に沿って分析していく。

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要約公開日 2019.11.07
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