ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと

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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2019年04月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

デパートの洋菓子コーナーを見渡すと、各々の店舗がその店ならではの個性を放っていることに気づく。さらに、店頭に陳列されている商品を手にとると、一目でそのお店の商品だとわかるような包装が施してある。普段、要約者はこうした商品を「なんとなく」購入しているが、企業や商品のブランディングに携わるプロフェッショナルらによって、戦略的に選ばされているのかもしれない。本書を読んでそんなふうに見方が変わった。

日本で生まれ育った著者らは、ニューヨークの美術大学、School of Visual Artsでデザインを学んだ。卒業後は仕事で経験を積み、2008年にデザイン会社HI(NY)[注・ハイ ニューヨーク]を設立した。米国コカコーラの新商品ラインのブランディングを手がけるなど、日本人デザイナーとしてグローバル・マーケットで成功した著者らは、日本人の「ブランディング」への理解の浅さに警鐘を鳴らしている。

日本には素晴らしい商品やサービスがあるのに、グローバル・マーケットにそれらを「伝える」ことができていないと著者らは語る。そうした危機感から本書では、著者らが考え、世界中の顧客に対して手がけてきた「ブランディング」の方法や実例を惜しみなく紹介する。

本書は、「マーケターの書いた難しいブランディング書籍よりも気軽に、そしてデザイナーの書いたブランディング書籍よりも実践的に」読めるように書かれてある。これからグローバル・マーケットでビジネスをする人も、すでにビジネスをしている人も、本書から成功のための大きなヒントを得られるはずだ。

ライター画像
光野美香

著者

小山田 育、渡邊 デルーカ 瞳(おやまだ いく、わたなべでるーか ひとみ)
HI(NY)共同代表。
クリエイティブ・ディレクター/アートディレクター/グラフィックデザイナー
NYの美術大学 Shool of Visual Arts グラフィックデザイン科を卒業。MTV、ブランディング・エージェンシーの The Seventh Art を経て2008年、HI(NY)を設立。近年の主な仕事に、米国コカコーラの新商品ブランディング&パッケージデザイン、国連の展覧会デザインなど。アトランタの High Museum やパリのコレットにて展覧会に参加。One Show、Graphis、GD USAなど多数受賞。AIGA会員、NYアートディレクターズクラブ会員。
hinydesign.com
hitomiwatanabe.com

本書の要点

  • 要点
    1
    ブランディングとは、時代や環境、顧客のニーズを考え、企業や商品やサービスのもつ「らしさ=個性」を戦略的に引き出し、その価値を全てのタッチポイントにおいて正しく演出し、効果的に伝わるかたちに落とし込むことだ。
  • 要点
    2
    ブランディングを支える柱は、ブランドの中枢部分であるブランド・システムと、その軸に基づく制作物であるブランド・コラテラルの2つだ。全てのブランド・コラテラルは、ブランド・システムの方を向き、一貫性を持っていなければいけない。

要約

【必読ポイント!】ブランディングの効果を最大化する

日本と世界の,デザインに対する解釈の違い
Peopleimages/gettyimages

著者である二人は、それぞれに本場ニューヨークでデザインを学びたいと考え、渡米した。そして、マンハッタンの中心に位置する美術大学、School of Visual Artsで入学初日に出会うことになる。大学で紹介されたインターンシップを通じて、著者らはともにMTVに就職。その後、アートディレクターとしてブランディング・エージェンシーへ転職し、様々な国の、ホテルなどのブランディングに携わった。フリーランスとしての仕事が増えたことをきっかけに独立の準備をはじめ、2008年にデザイン会社HI(NY)を設立した。

その後、2016年に日本支店を設立し、日本でのプロジェクトも増えていった。そこで「日本ではブランディングが正しく理解されていない」という課題が見えてきた。そして、それは日本と世界との「デザイン」の解釈の違いによって引き起こされているとわかった。HI(NY)は日本語でいうところの「デザイン事務所」として、「ブランディング」や「デザイン」の仕事をしてきた。著者らにとって「デザイン」とは、クライアントの課題点や強みを見極め、問題解決の方法を可視化して伝わるかたちに落とし込むことだ。しかし、日本では問題解決の部分は主に広告代理店のものだと考えられ、一般的なデザイン事務所では「見た目のいいものを作ること」が求められる。

一方、世界的な潮流として、その会社「らしさ」であるコアバリューに焦点をあて、その価値を全面に出すビジネスが増えている。また、消費者の社会への意識が高まっていることから、企業としてのビジョンやミッションを明確に公言することが求められる傾向にある。なんと、ミレニアル世代(1981年―1996年生まれ:2019年に23歳―38歳)の10人中9人が、商品やブランドのビジョンに共感できるか否かによって、購買するブランドを選ぶという。つまり、これからのビジネスにとっては、商品のつくり手側のメッセージを消費者が正しく理解し、共感できるように伝えることがとても重要なのだ。

ブランディングとは
patpitchaya/gettyimages

前述のように、ビジネスの情緒的な価値が重視される時代においては、消費者との戦略的なコミュニケーションが欠かせない。コミュニケーションといっても言語的なものだけではなく、視覚的要素・聴覚的要素・嗅覚的要素・味覚的要素・身体的要素などといった、相手の五感で感じられるもの全てを含む。

では、そうしたコミュニケーションを効果的に行うために大切なことは何か。それは、商品や企業が発する全てのメッセージが矛盾なく同じ方向を目指し、それらの世界観が一貫していることである。

商品や企業が発するメッセージは、タッチポイントと呼ばれる消費者との接点から伝えられる。たとえば、パンフレットやロゴ、パッケージなどがそれにあたる。また、商品やそのつくり手をとりまく雰囲気や世界観は、Look and feel(ルックアンドフィール)と呼ばれる。消費者に商品を手にとってもらうためには、この世界観を商品以外の要素も含めて全てで表現できているかが重要だ。

時代や環境、顧客のニーズを考え、企業や商品やサービスのもつ「らしさ=個性」を戦略的に引き出し、その価値を全てのタッチポイントにおいて正しく演出し、効果的に伝わるかたちに落とし込むこと、それがブランディングである。

ブランディングのためのチーム編成とは

海外では、市場に重きをおくマーケティングではなく、

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要約公開日 2019.11.05
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