カスタマーサクセスとは何か

日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」
未読
カスタマーサクセスとは何か
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日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」
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カスタマーサクセスとは何か
出版社
出版日
2019年07月08日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書のタイトルを目にした方の中には「カスタマーサービス」の本だと思った人もいるかもしれない(要約者はその一人である)。「カスタマーサービス? そんなこと知ってるよ」と。しかしもう一度見直すと「カスタマーサクセス」と書かれているではないか。聞き慣れない言葉「カスタマーサクセス」。そしてそれは「日本企業にこそ必要」であるそうだ。これはどういったことか?

答えを言ってしまうと、カスタマーサクセスとは「お客様に『成功』を届けること」。つまり、カスタマーにサクセスを届けるという、文字通りの意味である。著者によると、現在急成長している世界企業――アマゾン、アップル、ウーバー、アドビ、テスラなど――は、漏れなくこれを実行しているという。しかし「成功」と言っても、何を成功と定義するのか。そもそも「企業がお客様に成功を届ける」とは、何を指すのか。

本書の著者は、長年米国で経営コンサルタントとして活躍してきた弘子ラザヴィ氏だ。2017年にシリコンバレーで「カスタマーサクセス」という概念に出会い、その重要性を直感したという。今、猛烈な勢いでデジタル化が進み、企業サービスは地球規模で展開していっている。国境を越えた生き残り合戦が繰り広げられる中、いまだに過去の成功体験から抜け出せない日本企業が多いことに、著者は危機感を募らせている。

これからの時代、あらゆる企業に必要不可欠となる「カスタマーサクセス」とは何か、私たちは何に取り組めばいいのか。まだ遅くない。本書を読んで、勉強しようではないか。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

弘子 ラザヴィ(Hiroko Razavi)
経営コンサルタント。サクセスラボ株式会社代表取締役。一橋大学経営大学院修士課程修了。大学3年次に日本公認会計士二次試験合格。公認会計士として数多くの企業実務に触れたのち、経営コンサルタントに転じる。ボストンコンサルティンググループでは全社変革・企業再生プロジェクトを、シグマクシスではデジタル戦略プロジェクトを多数リード。2017年、スタンフォード経営大学院の起業家養成プログラムIgnite に参加するためシリコンバレーに在住した時にカスタマーサクセスに出会う。帰国後、サクセスラボ株式会社を設立。シリコンバレーで築いたネットワークを活かし、カスタマーサクセスに本気で取り組む日本企業を支援している。また日本で活躍するビジネスパーソンに向けた情報サイト「Success Japan(https://success-lab.jp/successjp)」の運営などを通じ、カスタマーサクセス市場の活性に努めている。

本書の要点

  • 要点
    1
    リテンションモデルとは、利用者がそれ無しでは生活できない存在になるモデルを指す。今後はリテンションモデルのプロダクト(サービス)が主流となっていき、その流れは止められない。
  • 要点
    2
    カスタマーサクセスとは、カスタマーに成功体験を届けることをいう。企業はカスタマーにとって何が「成功」なのかを、常に注意深く拾い出し、プロダクトに反映させることが重要だ。
  • 要点
    3
    メルカリでは、組織全体にカスタマーセントリックな文化が浸透している。これが、優れたプロダクトが開発され続け、価値を上げている原動力となっている。

要約

リテンションモデルへのシフト

「アマゾンなしでは生活できない!」
metamorworks/gettyimages

アマゾンの有料会員サービス、アマゾンプライム。一定の会費を支払うことで会員サービスを好きなだけ利用できる、サブスクリプションモデル(利用期間に対して固定制ないし従量制の利用料を支払う課金制度)である。契約は自動更新だ。著者は会員になって長年経つが、気づけば累計数万円の会費を支払っているという。

アマゾンの究極の目的は、アマゾンが利用者にとって無くてはならない存在になることである。ジェフ・ベゾスCEOは、これこそが「事業展開できる唯一の選択肢」と述べている。

アップルやライドシェアサービスのウーバーは、サブスクリプションモデルではないが、一度使えばそのサービスが日常的なものになることがほとんどだ。新しいiPhoneが登場するたびに買い替える人は多いし、アメリカのシリコンバレーでは、ウーバー無くしては過ごせないほどになっている。

アマゾンプライム、アップル、ウーバー。競争力の強いこの3つのサービスの共通点は、利用者がそれ無しでは生活できない存在になっていることだ。これをリテンションモデル(カスタマーを虜にするモデル)と言う。

リテンションモデルの定義

本書では、リテンションモデルの定義を、以下の4要素すべてを満たすプロダクト(サービス含む)であるとする。

1つ目は、利用者が、日常的・継続的にそのプロダクトを利用し、モノの所有に対してではなく成果に対して対価を払っていること。

2つ目は、利用者が、いつでも利用を止める選択権を持ち、かつ初期費用が非常に少ないこと。

3つ目は、利用者が、それ無しでは生活や仕事ができない・使い続けたいと断言できるほど、プロダクトが常に最新状態に更新・最適化され続けること。

そして4つ目は、利用者が、自分にとって嬉しい成果を得られるならば、自らの個人データをプロバイダーが取得することを許すことだ。

例えば音楽ストリーミングサービスの「アマゾンプライムミュージック」では、100万曲以上の中から好きな音楽を好きなだけ楽しめる。CDを購入しなくても、格段に安い費用で、いつでもどこでも音楽を聴けるのだ。

CD販売のような従来の「モノ売り切りモデル」は、売った瞬間にプロダクトの価値が固定化される。一方、リテンションモデルは、販売後にプロダクトの価値が最新・最適化され続ける。

リテンションモデルにおける事業の舵取りは、モノ切り売りモデルよりも難しい。だが「リテンション=カスタマーを虜にする」ことに成功すれば、結果的に競争優位に立ちやすいのが特徴だ。

ループが生み出すシフト
metamorworks/gettyimages

デジタル技術革新をきっかけに多くの要因が絡みあうトレンドが発生したが、このトレンドはさまざまなシフトを促している。以下の4つがトレンドの要点だ。

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要約公開日 2019.11.11
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