アマゾンの有料会員サービス、アマゾンプライム。一定の会費を支払うことで会員サービスを好きなだけ利用できる、サブスクリプションモデル(利用期間に対して固定制ないし従量制の利用料を支払う課金制度)である。契約は自動更新だ。著者は会員になって長年経つが、気づけば累計数万円の会費を支払っているという。
アマゾンの究極の目的は、アマゾンが利用者にとって無くてはならない存在になることである。ジェフ・ベゾスCEOは、これこそが「事業展開できる唯一の選択肢」と述べている。
アップルやライドシェアサービスのウーバーは、サブスクリプションモデルではないが、一度使えばそのサービスが日常的なものになることがほとんどだ。新しいiPhoneが登場するたびに買い替える人は多いし、アメリカのシリコンバレーでは、ウーバー無くしては過ごせないほどになっている。
アマゾンプライム、アップル、ウーバー。競争力の強いこの3つのサービスの共通点は、利用者がそれ無しでは生活できない存在になっていることだ。これをリテンションモデル(カスタマーを虜にするモデル)と言う。
本書では、リテンションモデルの定義を、以下の4要素すべてを満たすプロダクト(サービス含む)であるとする。
1つ目は、利用者が、日常的・継続的にそのプロダクトを利用し、モノの所有に対してではなく成果に対して対価を払っていること。
2つ目は、利用者が、いつでも利用を止める選択権を持ち、かつ初期費用が非常に少ないこと。
3つ目は、利用者が、それ無しでは生活や仕事ができない・使い続けたいと断言できるほど、プロダクトが常に最新状態に更新・最適化され続けること。
そして4つ目は、利用者が、自分にとって嬉しい成果を得られるならば、自らの個人データをプロバイダーが取得することを許すことだ。
例えば音楽ストリーミングサービスの「アマゾンプライムミュージック」では、100万曲以上の中から好きな音楽を好きなだけ楽しめる。CDを購入しなくても、格段に安い費用で、いつでもどこでも音楽を聴けるのだ。
CD販売のような従来の「モノ売り切りモデル」は、売った瞬間にプロダクトの価値が固定化される。一方、リテンションモデルは、販売後にプロダクトの価値が最新・最適化され続ける。
リテンションモデルにおける事業の舵取りは、モノ切り売りモデルよりも難しい。だが「リテンション=カスタマーを虜にする」ことに成功すれば、結果的に競争優位に立ちやすいのが特徴だ。
デジタル技術革新をきっかけに多くの要因が絡みあうトレンドが発生したが、このトレンドはさまざまなシフトを促している。以下の4つがトレンドの要点だ。
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