グレタ たったひとりのストライキ

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グレタ たったひとりのストライキ
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国連気候サミットでのスピーチなどが話題となり、日本でも注目を集めている16歳の女子高校生、グレタ・トゥーンベリ。本書は、彼女の母マレーナが中心となり、家族が共同で執筆した本である。マレーナは歌手として、スウェーデン国内では国民的に知られた有名人でもある。娘のグレタは、思春期の始まりに環境問題についての映画を観てショックを受け、食事もとれないほどのうつ状態を経たのち、アスペルガー症候群、選択的緘黙(かんもく)症と診断される。本書には、家族が症状と向き合い、グレタとともに地球温暖化をはじめとする環境問題への意識を高め、アクションを起こしていく様子が描かれている。

グレタはスピーチで、怒りをあらわに、今すぐに抜本的な変化のための行動を起こすよう、強く主張する。グレタが怒るのは、自分たちのような子どもが将来最も大きな影響を受けるのに選挙権もない一方で、大人たちは危機に際して何もしないままでいるからである。危機はすぐそこまで迫っていて、科学者や専門家になるために勉強をしている時間的余裕はない。今すぐに変化を始めなければならない。その焦燥感が、グレタに怒りを抱かせている。

多くの人が、頭では温暖化が深刻であることを理解しつつ、実際に効果のある対策に向かって動けずにいるのは、彼女のように危機が現実的なものとして実感できていないからだろう。しかし、本書を通して、「私たちの家が燃えている」と訴えるグレタの怒りを受け取ることで、大人たちも危機を身近なものとして実感できるようになるのではないだろうか。

ライター画像
大賀祐樹

著者

マレーナ&ベアタ・エルンマン
グレタ&スヴァンテ・トゥーンベリ
グレタは2003年、オペラ歌手マレーナ、俳優スヴァンテの長女として生まれる。11歳のとき、授業で環境問題の映画を観てショックを受けて以降、摂食障がいになり10キロ瘦せる。また、ごく親しい人としか話さなくなり、うつ、アスペルガー症候群、選択性緘黙(かんもく)症と診断されるが気候問題は独学を続け、家族も影響されていった。2018年8月20日、ついにストライキを決行。国会議事堂前に3週間通い、座りこむ。それがSNSで世界に拡散され、マスコミが殺到した。以後も毎週金曜日に「未来のための金曜日(フライデイズ・フォー・フューチャー)」と名づけて議事堂前に立ち、世界中の子どもたちが続くようになった。また、グレタは世界各地でスピーチもし、大物政治家や大企業家たちを前に彼らを厳しく批判、すぐに気候変動の具体的対策を打つよう訴えつづけている。
本書は、グレタと家族に関する初めての本である。赤裸々な日々が綴られ、本国スウェーデンで大きな話題になった。各国でも続々と翻訳刊行中。妹のベアタと一家4人、ストックホルムに暮らす。

本書の要点

  • 要点
    1
    グレタは、世界中の海に浮遊する大量のごみに関する映画を観たことをきっかけに、深刻なうつを発症した。その後、グレタも妹のベアタも発達障がいがあると診断され、両親はできるかぎりのことをしようと姉妹に寄り添った。
  • 要点
    2
    二酸化炭素課税や大量の植林を実行することで、人びとの生活習慣は変わり、持続可能性を第一に掲げる社会を築けるはずだ。危機を認識することが危機への解決策となる。
  • 要点
    3
    三週間の学校ストライキを始めたグレタは、見知らぬ人と話せるようになり、人前でスピーチできるようになった。彼女の運動はまたたくまに世界中にひろがった。

要約

家族の話

泣きつづけたグレタ

すべての発端は、グレタが授業で観た、世界中の海に浮遊する大量のごみに関する映画だった。映画を観ながらグレタは泣きつづけた。映画を観終わったあとは、クラスメートとの雑談にも加われなかったし、ランチのハンバーガーも食べられなかった。

グレタは、ほかのみんなにとっては簡単な普通の日常生活を送るのが難しい。なぜなら彼女には、ほかの人間が見ようとしていないものが見えているからだ。人間が排出した二酸化炭素、工場の煙突からたちのぼる温室効果ガスが風に吹かれ、大量の灰燼を撒き散らしているのがグレタには見える。私たちはみんな裸の王様で、グレタはそれを指摘する子どもなのだ。

順風満帆だった一家
kyonntra/gettyimages

一家の母、マレーナは、歌うことが大好きで、小さなころから舞台に立ち、オペラ歌手になった。そして、役者として活躍するスヴァンテと出会い、最初の子どもグレタをみごもった。そのころ、スヴァンテは役者として大きなチャンスをつかみかけていたが、妊娠中のマレーナのそばにいることを優先した。一家はヨーロッパの都市を2か月ごとに移り住み、グレタが生まれた三年後には妹のベアタが誕生した。家族の日常は、あまりにも素晴らしかった。

オペラ歌手として活躍してきたマレーナは、ポピュラーソング界に打って出て、押し寄せるほどの観客を集める人気者となった。しかし、5年生になったばかりのグレタが、前述の映画をきっかけに心身の調子を崩し、笑わず、話さなくなったことですべてが変わった。マレーナはグレタのために、公演の契約をすべてキャンセルして、そばにいることを選んだ。

グレタとベアタの思春期

グレタは2カ月もの間まともな食事をせず、体重は10キロほど減ってしまった。朝食にバナナ3分の1を食べるのにも50分以上、昼食にニョッキを5個食べるのにも2時間以上かかった。いくつかの病院で診察を受けた結果、グレタはアスペルガー症候群、高機能自閉症、強迫性障がいと診断された。グレタは、映像記憶ができ、世界中の首都の名前をスラスラ言えるほど聡明だったため、彼女のために先生は空き時間にこっそり勉強を教えてくれた。

グレタに回復の兆しが見られるようになったころ、今度はベアタが感情を爆発させるようになった。ベアタは歌とダンスが大好きで、マレーナから見ても天才的な音楽の才能を持っていた。人前や学校では行儀よくふるまっていたが、家に帰ると両親に当たり散らした。最終的に、ベアタはADHDで、アスペルガー症候群、強迫性障がい、反抗挑戦性障がいの傾向もあると診断された。診断が出たことで、学校は特別な配慮をし、彼女は学校生活を順調に送れるようになった。

スヴァンテとマレーナは責任を分かち合い、住居エリアも分けて、父がグレタを、母がベアタをというように、それぞれ子どもを一人ずつみることにした。

危機的状況を認識するために

環境問題から目を背ける人々
duncan1890/gettyimages

スウェーデン人は毎年1人あたり11トンの二酸化炭素を放出している。

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要約公開日 2019.11.24
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