すべての発端は、グレタが授業で観た、世界中の海に浮遊する大量のごみに関する映画だった。映画を観ながらグレタは泣きつづけた。映画を観終わったあとは、クラスメートとの雑談にも加われなかったし、ランチのハンバーガーも食べられなかった。
グレタは、ほかのみんなにとっては簡単な普通の日常生活を送るのが難しい。なぜなら彼女には、ほかの人間が見ようとしていないものが見えているからだ。人間が排出した二酸化炭素、工場の煙突からたちのぼる温室効果ガスが風に吹かれ、大量の灰燼を撒き散らしているのがグレタには見える。私たちはみんな裸の王様で、グレタはそれを指摘する子どもなのだ。
一家の母、マレーナは、歌うことが大好きで、小さなころから舞台に立ち、オペラ歌手になった。そして、役者として活躍するスヴァンテと出会い、最初の子どもグレタをみごもった。そのころ、スヴァンテは役者として大きなチャンスをつかみかけていたが、妊娠中のマレーナのそばにいることを優先した。一家はヨーロッパの都市を2か月ごとに移り住み、グレタが生まれた三年後には妹のベアタが誕生した。家族の日常は、あまりにも素晴らしかった。
オペラ歌手として活躍してきたマレーナは、ポピュラーソング界に打って出て、押し寄せるほどの観客を集める人気者となった。しかし、5年生になったばかりのグレタが、前述の映画をきっかけに心身の調子を崩し、笑わず、話さなくなったことですべてが変わった。マレーナはグレタのために、公演の契約をすべてキャンセルして、そばにいることを選んだ。
グレタは2カ月もの間まともな食事をせず、体重は10キロほど減ってしまった。朝食にバナナ3分の1を食べるのにも50分以上、昼食にニョッキを5個食べるのにも2時間以上かかった。いくつかの病院で診察を受けた結果、グレタはアスペルガー症候群、高機能自閉症、強迫性障がいと診断された。グレタは、映像記憶ができ、世界中の首都の名前をスラスラ言えるほど聡明だったため、彼女のために先生は空き時間にこっそり勉強を教えてくれた。
グレタに回復の兆しが見られるようになったころ、今度はベアタが感情を爆発させるようになった。ベアタは歌とダンスが大好きで、マレーナから見ても天才的な音楽の才能を持っていた。人前や学校では行儀よくふるまっていたが、家に帰ると両親に当たり散らした。最終的に、ベアタはADHDで、アスペルガー症候群、強迫性障がい、反抗挑戦性障がいの傾向もあると診断された。診断が出たことで、学校は特別な配慮をし、彼女は学校生活を順調に送れるようになった。
スヴァンテとマレーナは責任を分かち合い、住居エリアも分けて、父がグレタを、母がベアタをというように、それぞれ子どもを一人ずつみることにした。
スウェーデン人は毎年1人あたり11トンの二酸化炭素を放出している。
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