一般的に、サービス内容を絞り込み、狭い範囲でトップを目指すという営業スタイルは、「ランチェスター戦略」と呼ばれる。他にも「地域ナンバーワン戦略」や「ニッチトップ戦略」とも呼ばれている。
ランチェスター戦略の基本的な考え方は非常にシンプルだ。戦いでは、「数が多い方が勝つ」というのがその根幹である。数に勝る強者を相手にする弱者としては、「数が多い方が勝つ」という状況を作らせないために、強者に対する明確な差別化を目指さなければならない。
ランチェスター戦略は、時にただやみくもに一点集中することだと勘違いされることがある。しかし、重要なのは自社の強みやライバルの弱みをきちんと認識し、その他の諸々の経営環境を鑑みた上で、絞り込むサービスや商品、注力するべき分野を決定することだ。
ライバル、お客様、自社について徹底的に情報を集め、自社がライバルに比べて差別化すべきポイントを見極めて、必要ないものは思い切って捨てる。こうして自社の強みを絞り込み、差別化することこそが弱者の戦い方なのだ。差別化といっても、「抜きんでた技術を開発する」といった難しいものだけを考える必要はない。顧客対応のよさ、地域ナンバーワンの品揃え、特定のお客様に特化したサービスなども十分な差別化と言ってよく、いくらでも方法はあるということに気付いてほしい。
ランチェスター戦略では、シェア一位(=強者)と二位以下(=弱者)では営業戦略が違うという考え方をとる。強者は強者としての、弱者は弱者としての戦い方をする必要があるのだ。弱者が強者の戦い方をしてしまえば、決して勝てないばかりか余計にシェアを減らしていくことになる。
前述のように、弱者の戦略とは差別化である。その弱者の戦略の要諦は、「強者との正面衝突は絶対に避ける」ことにある。例えば、敵が視界に入るような狭い地域での局地戦に持ち込むことや、一騎討ち型の戦いに持ち込むような戦い方をしなければならない。一方強者はというと、基本的には「ミート戦略」を取ればいい。相手が商品の質を向上させることで差別化を図ってきたら、自分も同じように商品の質を上げるように、弱者が取ってきた差別戦略に合わせる(=ミート)し、同じことをすればよいのだ。
ライバルとの共存が成り立つのは、マーケットが成長している時のみだ。人口が減り多くのマーケットが縮小している現在では、弱者としての差別化、強者としてのミートを意識することが、生き残っていく上でますます重要になる。
福島県いわき市の不動産会社のケースを紹介する。同社は社員数三十名足らずの小さな会社である。彼らにとっての強いライバルは、大手不動産会社や大手ハウスメーカー、大手不動産チェーンだった。大手不動産会社が得意とするのは新築マンションの分譲、大手ハウスメーカーであれば新築戸建ての販売、大手不動産チェーンは賃貸物件の仲介が収益の中心だ。同社にとって、大手のライバルと直接戦っても勝ち目はない。
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