LEAP

ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則
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ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則
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出版社
プレジデント社

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出版日
2019年12月03日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」――まったく同じ歴史が繰り返されることはありえないが、繰り返される「パターン」は存在するという意味だ。歴史を丸暗記することそのものに価値はない。だが歴史から失敗や成功パターンを学ぶことには、大きな価値がある。失敗パターンに嵌まらないように警戒したり、成功パターンに乗せたりするためには、どうすればよいのか。

一時は栄華を誇ったのにもかかわらず、あっけなく衰退した企業と栄え続けている企業の事例が、本書では豊富に紹介される。とりわけ要約者は、米国の老舗ピアノメーカーのスタインウェイが衰退した一方で、日本の新興ピアノメーカーのヤマハが業界トップに躍り出た、という対比が興味深いと感じた。

スタインウェイのように、成功体験ゆえに容易に方針転換できず、衰退していく企業は想像以上に多い。時代の変化や競合の出現により、いつの間にか強みであったはずの技術や設備、人材が負の遺産となり、企業の足を引っ張る弱みとなってしまうというのはよくある話だ。そうならないためには、いま土台としている知識分野から離れることも考慮しなければならない。

本書では、いまの知識分野とは異なる知識分野へリープ(跳躍)し、新たに知識を活用し創造するための5つの原則がまとめられている。歴史から学ぶことの重要性をあらためて知るとともに、何が起きるかわからない時代を生き抜くための手がかりを、本書からは得られるだろう。

著者

ハワード・ユー (Howard Yu)
世界トップクラスのビジネススクールIMD(スイス・ローザンヌ)教授。同スクールのエグゼクティブ向けコース、AMP(Advanced Management Program)ディレクター。2011年にハーバード・ビジネススクールにて博士号を取得。専門は戦略とイノベーション。 洞察に富むケーススタディーには定評がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    長期にわたり成功するための唯一の方法は、「リープ(跳躍)」することである。
  • 要点
    2
    リープするための原則は、(1)自社の基盤となっている知識とその賞味期限を知ること、(2)新たな知識分野を見つけ、開拓すること、(3)地殻変動レベルの変化を味方につけること、(4)とにかく実験を続けること、(5)実行に際して「ディープダイブ」することだ。
  • 要点
    3
    企業が新たな知識分野へとリープする際、CEOは戦略立案以外にも責任を持ち、中間レベルのゼネラルマネジャーが尻込みするようなリスクを果敢に吸収しなければならない。

要約

競争の仕組み

底値を目指す競争
alkir/gettyimages

1870年代終わりから1890年代にかけて、米国ではビードモントを横断する鉄道が建設された。さらにその鉄道を活用するビードモント製造会社(PMC)が設立された。1876年3月15日、PMCは綿布の中国への輸出を開始し大成功。設備を整えたPMCは、繊維メーカーとしてアジアへと繊維製品を輸出し始めた。PMC以外の企業も追いかけるようにアジアへ進出すると、安価なアメリカ企業の繊維製品がアジアを席巻し、それまで支配的だったイギリス企業の繊維製品は売れなくなっていった。

だが第二次世界大戦後、日本企業がより安価な繊維製品を生産し、さらに10年すると香港や台湾、韓国が繊維製品を生産した。その次は中国、インド、バングラディシュへと、繊維産業の中心は次々と移転していった。

20世紀末、繊維産業でにぎわったアメリカの都市に、かつての面影はない。繊維産業以外にもこうした浮沈の激しい産業は数多くある。たとえば再生エネルギー業界。風力タービンは、ゼネラル・エレクトリックやシーメンス、ヴェスタスなど、欧米企業が生産していた。しかし20年ほどすると、ゴールドウインドなどの中国企業が市場シェアを奪い、グローバル市場で主要メーカーとなった。

長期にわたって成功するための唯一の方法

繊維産業の衰退と対照的に、スイスの製薬産業は1世紀半もの長期にわたり、業界トップを維持している。スイス北西部のバーゼルには、世界第3位の製薬会社ノバルティスの世界本社がある。ノバルティスの前身はガイギー、CIBA(チバ)、サンドの3社だ。彼らはもともと製薬会社ではなく、染料メーカーだった。だが20世紀が始まる頃には、コモディティ化した染料から、きわめて利益率の高い医薬品へと主力製品をシフトしていた。

ではなぜ医薬品産業は、繊維産業のようにコモディティ化しなかったのか。それは医薬品産業自体が、当初の有機化学からまったく新しい分野に移っていたからだ。その新たな知識分野こそ微生物学である。20世紀の中頃までには、製薬業界の研究の焦点は有機化学から微生物学へと変わっていた。スイスの製薬会社は、2つ目の知識分野である微生物学を発展させたからこそ、新たな寿命を得たのである。

こうしたスイスの製薬会社から学べるのは、長期にわたり成功するための唯一の方法は「リープ(跳躍)」するということだ。先行企業は異なる知識分野へとリープし、製品の製造やサービスの提供に関して、新たに知識を活用したり創造したりしなければならない。

企業がリープするためにはどのような考え方とマネジメントをすべきか、本書では5つの原則にまとめている。(1)自社の基盤となっている知識とその賞味期限を知ること、(2)新たな知識分野を見つけ、開拓すること、(3)地殻変動レベルの変化を味方につけること、(4)実験、実験、実験すること、そして(5)実行に向けて「ディープダイブ」することだ。

強みが弱みに変わるとき

危機に直面した名門企業
dima_sidelnikov/gettyimages

リープできた企業とリープできなかった企業は何が違うのか。ここでは2つのピアノ製造会社の対比から、その特徴を見てみよう。

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要約公開日 2020.03.24
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