言語化力

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出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2020年01月24日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、この先も繰り返し読みたい――要約者は率直にそう感じた。著者の思考を自分の頭に刷り込みたい、そう思ったのだ。

要約者はライターであるため、これまでにも言語化や言葉の使い方をテーマにした書籍をたくさん読んできた。しかしながら本書には、他の書籍にはない特有の凄みがあり、食い入るように読んだ。

著者は、言語化するには段取り、つまり型が必要だという。自分の意見を言いたいのに言えない人でも、その型を踏むことで、言語化できるようになるそうだ。本書はその型の習得方法を教えてくれる。

何より本書は読みやすい。類書の中には「国語の先生による学校の平々凡々とした授業」といった雰囲気のものもあるのに対して、本書は「大手予備校の人気講師による個別授業」のようなオーラがある。類書なら流し読みしていたようなことでも、本書だとズイっと頭に入ってきて、読み進めるたびに立ち止まって考えさせられた。

学校の授業と予備校の人気講師の授業の面白さを比べると、多くの場合、予備校の人気講師の授業のほうに軍配が上がるだろう。人気講師の授業は、生徒の食いつきが凄いのだ。それは、説明がわかりやすいために、内容が頭に入ってきやすく、好奇心をかきたてられるからだ。本書はそんな、読者を夢中にさせてくれる一冊だった。

自分の意見を言いたいのにうまく言えない人。自分の言葉に影響力を持たせたい人。そんな人は、本書を読むと、間違いなく多くのヒントが得られるだろう。

著者

三浦崇宏(みうら たかひろ)
The Breakthrough Company GO代表・PR/クリエイティブディレクター。
博報堂・TBWAHAKUHODOを経て2017年独立。博報堂では、マーケティング、PR、リエイティブ部門を歴任。PR戦略を組み込んだクリエイティブを数多く手がける。現在は、様々な業種のプロフェッショナルを集め、新規事業開発から広告まで幅広く問題解決を手がけるThe Breakthrough Company GOを設立。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで金賞、ACC総務大臣賞ほか受賞。雑誌「ブレーン」にて「2019年注目のクリエイター」に選出される。

本書の要点

  • 要点
    1
    無名アカウントから発信された「保育園落ちた 日本死ね」というツイートは、国会での議論の対象にまでなった。言葉という武器は、世の中を変えることさえできる。
  • 要点
    2
    問題や事象について言語化するには、スタンスを決める→本質をつかむ→感情を見つめる→言葉を整えるというプロセスを踏むのが効果的だ。
  • 要点
    3
    言葉をネット記事やツイッターでバズらせるためのポイントは、短くシンプルであること、意外性があること、学びがあること、そして明日からすぐにやれることだ。

要約

すべては言葉で変えられる

「保育園落ちた 日本死ね」に学ぶこと
svetikd/gettyimages

2016年、Twitterの無名アカウントから発信された「保育園落ちた 日本死ね」というツイートが拡散され、国会での議論の対象にまでなった。有名人でも学者でもない普通の女性のツイートが国を動かすきっかけとなったのだ。私たちは今、そんな奇跡が普通に起こる社会に生きている。

「保育園落ちた 日本死ね」は、シンプルだが強力なコピーだ。「保育園落ちた」というファクト(事実)があり、「日本」という「建前だらけの大きい敵」を倒したいという意志が伝わってくる。しかも「死ね」というインパクトある言葉との組み合わせだ。一般人の生活からあふれ出た魂の言葉として、強い力を持っていた。

言葉は武器だ。社会現象を起こし、世の中を変えることさえできる。たとえば、「イクメン」という言葉ができたことで父親の育児参加が促進された。「おひとりさま」という言葉によって孤食の市場ができた。

「言葉にする」方法

言語化には「段取り」がある

問題や事象について語りたくても、うまく言語化できない人もいるだろう。そんな人は、スタンスを決める→本質をつかむ→感情を見つめる→言葉を整えるというプロセスをたどってみるといい。最初はうまくいかず苦労するかもしれない。言葉を使いこなすには練習が必要なのだ。

まず、スタンスを決めること。自分の社会における立ち位置と世の中の動きに対する好き嫌いを明確にしよう。社会がどう変われば自分が快適にストレスなく生きられるかを考えると、自然とクリアになるだろう。

地方都市の市役所で働いているなら、日本のSNS炎上社会についてどう思うか。4人の子どもを育てるシングルファーザーなら、今の働き方改革についてどう思うか。自分のスタンスが見えてこない場合は、ニュースを幅広く見てみると、気になること、感じることが見えてくるはずだ。

次に、本質をつかむこと。表面的な現象ではなく現象の構造をつかみ取ることだ。そのためには、固有名詞を省いて時系列も無視して、行為と現象と関係性だけを抜き出すというプロセスを踏めばいい。慣れれば一瞬でできるようになる。

次に、感情を見つめること。問題の本質をつかんだ後は思いっきり自分に目を向けよう。人の心を動かすのはいつだって感情である。

問題の本質をつかんだら、自分のスタンスと照らして、どんな感情を抱いたか冷静に観察する。喜怒哀楽の4パターンだけではない。ワクワクした、ムカついた、誰かに伝えたくなったなど、様々なグラデーションがあるだろう。

自分の感情を見つめた後は、その感情を抱いた理由を考える。腑に落ちるまで、徹底的に自問してみる。

最後に、言葉を整えること。ここまでのステップで生み出された言葉を、相手やその場の雰囲気に合わせて調整する。相手に残したい印象によって言い方を丁寧にしたり、ネガティブをポジティブにしたりして、整えていく。

言葉の優先順位をつける
Auris/gettyimages

言いたいことがありすぎて、言葉が出てこない人もいるだろう。大切なものを聞かれても、「もちろん仕事も大事だし、家族も大事にしてるし……」と優先順位をつけることができない人だ。そういう人は、「言葉で順位づけ」をする必要がある。

まず、思いついたことを言葉にして紙に書き出してみる。一つひとつの要素を書き出して、言葉の因数分解をしていくと、思考の輪郭が明確になる。それを言葉にし、具体的に検討していけば、自分にとって本当に重要なこととそうでないことが見えてくる。

また、すべてを話そうとしてはいけない。優先順位をつけたり、割り切ったりすることも大事だ。映画の感想を聞かれたとき、「あのシーンもよかったし、CGもきれいだったし、テーマにも共感できたし」と並べると印象は薄くなる。それなら1つだけに絞って「あのシーンはよかったです。なぜかというと~」と掘り下げて話すほうが、相手の関心を引きやすいだろう。

伝えることを1つに絞ると、インパクトが増す。人間は、そんなにたくさんのことを覚えてはいられないものだ。

【必読ポイント!】印象に残る言葉をつくる

「印象に残る言葉」を生み出すポイント

著者は、ネットの記事やツイッターでバズらせるために、言葉選びにおいて気を付けているポイントが4つあるという。それは、(1)「短くシンプル」か、(2)「意外性」があるか、(3)「学び」があるか、(4)明日から「すぐにやれる」かだ。

たとえば人脈についてインタビューされたとき、著者は「会いたい人こそ、自分から会いに行ってはいけない」と答えた。短くシンプルな回答だ。だが著者には、この1行が見出しになり、その記事が多くの人に読まれるであろうということが予想できていたという。

この言葉は、意外性がある。SNSでどんな大物とも簡単につながれる時代なのだから、自分から積極的に会いに行こう――そう言われることが多い。一方、著者は、まずは相手にとってメリットのある人物になって、先方から会いたいと言われるようにならなくてはならないと考え、この表現を選んだ。

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要約公開日 2020.04.01
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