事業のタネは最初から起業家の手の中にあるわけではない。自分の経験や能力から着想を得たり、マーケットや社会の動向を見たりしながら、自分の心が突き動かされるような事業を構想するのが起業のスタートラインだ。
アイディアの見つけ方には大きく3つのパターンがある。海外サービスの日本版を考えながらアイディアの具現化を進めていくのが「事例起点」。他人が抱えている課題や、サービスを利用したときに自身が感じた不満からアイディアを練るのが「課題起点」。スマホの登場など、ユーザーの行動や技術の進化・環境の変化にビジネスチャンスを見いだすのが「構造変化起点」である。
起業したいなら、情報収集を怠ってはいけない。本書でインタビューした起業家たちはみな、自分が挑もうとしている事業領域について、誰よりも精通していると言えるまで情報収集をしていた。原体験はあればなおいいが、なくてもいい。半年間も必死に情報収集すれば、業界の人にも引けを取らないくらいになるだろう。
どんなアイディアも必ず、実現性の壁にぶつかる。アイディアをお蔵入りさせないためにチェックすべきポイントを2つ紹介しよう。
まずは、「誰の何の課題を解決しているのか」だ。ターゲット、ニーズ、ペインポイントを明確にしよう。ただ一人のユーザーをペルソナとして、ユーザー側の視点でアイディアを徹底的に吟味する。自分のアイディアがそのユーザーの課題を根本的に解決できているかどうかが重要だ。それができなければ事業の成長は見込めない。
次に、「数年後により多くの人に使われるサービスか」だ。アイディアを探す際には、常に未来志向でなければならない。数年後、社会がどう変化しているかを想像しながら、そのときに必要とされるサービスを考えよう。
視線の先を未来に据えて、まだ誰も気づいていないトレンドや兆候を先取りしてサービスを設計する。これこそが起業の醍醐味というものだろう。
ココン株式会社の倉富佑也氏が起業したのは、学生のときだ。起業するという夢を実現するため、大学を休学して中国上海に渡り、好物であったベーグル屋を開店した。
飲食業を選んだのは、現地の文化や商習慣を学びつつ、顧客と直接コミュニケーションできて、調達や採用も経験できると考えたからだ。なんとか開店にこぎつけたが、売上が伸びずにわずか3ヶ月で撤退するはめになった。
何でも自分でやろうとしたため、オペレーショナルな業務に手間を取られて冷静な意思決定ができなかったことと、市場選びに失敗したことが敗因だと倉富氏は振り返る。希望的観測で始めてはいけない。事業が成り立つかどうか、ユーザー視点で考え抜くべきだ。
次に目をつけたのはソーシャルゲームだった。市場は世界的に拡大している一方で、日本国内では、グラフィックスの供給が追いついていない。これを海外にクラウドソーシングしてはどうかと考えたのだ。
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