今、海外で日本酒需要が高まっている。清酒輸出総額が10年連続過去最高金額を更新し、海外のレストランでは、人気の日本酒ボトルを見かけることが増えてきた。
このような海外での日本酒人気のきっかけは、2013年「和食-日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことだ。それまでの海外における日本酒といえば、海外駐在員の日本人が恋しくて飲むという消費がメインだったが、世界遺産の和食とともに日本酒を味わいたいと人気が一気に高まった。
また、インバウンドの急増も日本酒の消費拡大を後押ししている。日本で和食や日本酒を堪能した人たちは、お土産として日本酒を購入し自国でも楽しむようになった。
さらに、海外での日本酒人気が日本に逆輸入されている。特に海外の文化人と交流が多い日本人は、かれらの日本酒への興味や姿勢に少なからず影響を受け、「日本文化としての日本酒を知ろう」という意識が高まってきた。実際、日本酒を学びたいという若者のためにセミナーを開催するところも出てきている。YouTubeやリモートでのウェビナーなどを活用し、気軽に日本酒について学べる環境も整っている。
日本酒はいまや、必須の教養となっているのだ。
では、具体的に日本酒について学んでいこう。
日本のお酒は、「酒税法」によって発泡酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類に分けられている。その中で日本酒は、醸造酒類の「清酒」にあたる。
「ボルドー」「シャンパーニュ」など特定の地域をお酒の名称にする地理的表示は、種類や農産物などの品質やブランドを守ってきた。一方、日本酒には長らく地理的表示はなかったが、2005年の「白山」(石川県白山市)で初めて認められ、「山形」「灘五郷」などが続いた。これによって、原料のお米は国産のみ、国内製造の清酒のみが地理的表示「日本酒」を独占的に名乗ることができるようになった。外国産のお米を使用した清酒や日本以外で製造された清酒が流通しても「日本酒」としては表示できないため、消費者が区別しやすくなり、高品質な「日本酒ブランド」のPR、価値向上にもつながっている。
日本酒の原料は酒税法で定められており、日本酒のラベルを見ると確認することができる。基本的な原料はお米、水、米麹。その他「酵母」「乳酸菌」などの微生物、「醸造アルコール」も日本酒選びには欠かせない要素だ。
米は、日常的にごはんとして食べる「米」とは区別され、「酒造用米」と呼ばれる。酒造用米は日本で栽培される米の5%程度。さらにいくつかの条件をクリアした「酒造好適米」は酒造用米のうちわずか1%しかない。
酒造好適米の栽培には、病気や害虫対策として日当たりや風通しを考慮する必要がある。また、苗の間隔を通常の2倍ほど取るため、面積あたりの収穫量が限られる。非常に手間とコストがかかるため、最高級のものでは1キロ当たり500~600円、食用の米の2倍ほどの価格になる。これほど高い原料を使って造るお酒は他にない。それにも関わらず、他の高級酒に比べると日本酒はかなり安価な設定となっている。近年、これでは日本酒は発展しないと感じ、ブランド価値をもつ高級日本酒に力を入れ始めたメーカーも出てきている。
日本酒の味を決める原料は「水」だ。
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