マイノリティデザイン

「弱さ」を生かせる社会をつくろう
未読
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おすすめポイント

誰でも、「苦手」なことや「弱さ」、「マイノリティ性」を持っているものだ。「マイノリティデザイン」は、たったひとりの「弱さ」を起点にして、世界をより良くしようとする考え方だ。大規模なマーケティングは「マイノリティ」を対象にしないことが大半だろう。マイノリティデザインの考え方は非効率的に思えるかもしれない。しかし、ある人のマイノリティに寄り添ってデザインされたものは、その周辺にいるほかの人にとっても役立つものになるかもしれない。

たとえば、本書で紹介されている、「あるひとりの人の障害を起点につくられた服」は、障害のあるなしにかかわらず、「かっこいいから」「機能性が高いから」と、さまざまな人に購入されていったそうだ。また、運動音痴である著者は自らを「スポーツ弱者」と呼び、自分のマイノリティ性から出発して、誰でも楽しめる「ゆるスポーツ」をつくった。これは、結果的に運動が苦手な多くの人を巻き込みながら、障害者と健常者が対等に勝負できるプラットフォームになっている。

自分のあるがままを認めて、「弱さ」を克服せずに社会の側を変えてしまう。そんな「マイノリティデザイン」は、働くことや生きることの意味を改めて考えさせてくれる。多種多様な「マイノリティ」に合わせて変わった先の社会は、多くの人にとって息の吸いやすい世界になっているのではないか。そんな希望に溢れる一冊だ。

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しいたに

著者

澤田智洋 (さわだともひろ)
コピーライター / 世界ゆるスポーツ協会代表理事
1981年生まれ。言葉とスポーツと福祉が専門。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後、17歳で帰国。2004年、広告代理店入社。アミューズメントメディア総合学院、映画「ダークナイト・ライジング」、高知県などのコピーを手掛ける。 2015年に誰もが楽しめる新しいスポーツを開発する「世界ゆるスポーツ協会」を設立。これまで80以上の新しいスポーツを開発し、10万人以上が体験。また、一般社団法人障害攻略課理事として、ひとりを起点に服を開発する「041 FASHION」、ボディシェアリングロボット「NIN_NIN」など、福祉領域におけるビジネスを推進。著書に『ガチガチの世界をゆるめる』(百万年書房)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人はみな、なにかの弱者・マイノリティである。マイノリティを起点に、世界をより良い場所にするのが「マイノリティデザイン」だ。
  • 要点
    2
    「スポーツ弱者を、世界からなくす。」をミッションに、著者が自分のマイノリティ性に注目して生み出したのが「ゆるスポーツ」だ。
  • 要点
    3
    活動の舞台を広告から福祉にスライドさせることで、著者は、もう一度、自分の働き方と生き方を自分の手に取り戻すことができた。
  • 要点
    4
    生態系をつくるマイノリティデザインのフレームワークは、これからの社会に求められる事業構想にも役立つことだろう。

要約

【必読ポイント!】 マイノリティデザインはこうして生まれた

広告の向こうにいる人たちを知らずに働いていた
tatianazaets/gettyimages

20代で入社した広告会社で念願のクリエイティブ試験合格を果たし、広告業界の花形であるCMプランナーとして働いていた著者は、いつしか自分の仕事に疑問を抱くようになった。「広告作業」は、納品しては次、納品しては次の繰り返しだ。100人規模のチームで数か月かけて作ったCMの放映は1〜2週間。生活者の顔を見ることもなくパソコンに向かう毎日で、どこか仕事に手触り感がない。

こんなむなしさを抱えている人は、きっと自分以外にもたくさんいるのではないか。自分が納得できる仕事を求めて、著者は広告の本流からは逸れ、マンガの連載や、広告したい企業へ飛び込んで勝手に広告を作るという運動を始めた。そうして広告業界の隅っこで自分のペースで働ければいいのかな、と思いはじめていた頃、転機が訪れる。

広告から福祉の世界へ

2013年1月、著者ら夫婦に長男が誕生する。生後3か月ほどして、彼の目が見えないことがわかった。著者は得意としていたはずの「ちょっと笑える」仕事がまったくできなくなってしまった。頭の中は絶望で占められ、ギャグが思いつかないし、コピーが書けないのだ。

息子は幸せなのか。目の見えない子はどうやって育てたらいいのか。希望を探して、著者は障害当事者に会いに行くことを思い立つ。障害のある人、その家族や雇用している経営者、3か月にわたり200人を超える人たちと会う日々の中で、多くの発見があった。彼らの生き方や暮らしそのもの、困難の乗り越え方や幸せの定義、それぞれの考え方を知ることは、著者にとって「学びなおし」の機会にほかならなかった。

そして、障害当事者を含めた「マイノリティ」の課題や価値を、自分の持つ「広告」の力で輝かせることができるのではないかと思うようになる。2014年、ブラインドサッカー世界選手権のために、「見えない。そんだけ。」というコピーを書いた。それまでにいくつものコピーを考えてきたが、これほど感謝されたことはなかった。ポスターが公開されると、開幕戦はチケットが完売し、パラスポーツとしては異例の動員になった。

ブラインドサッカーとの関わりをきっかけに、著者は広告の力をもう一度信じられるようになった。そして、障害のような「マイノリティ」を起点に、世界をより良い場所にする、「マイノリティデザイン」を、自分の人生のコンセプトにしようと決めたのである。

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要約公開日 2021.03.18
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