古代都市バビロンに住む二輪馬車職人バンジールと竪琴の名手コビは、いくら働いても裕福になれない身を嘆き合っていた。
バンジールは、誰にも負けない二輪馬車を作るために働き続けてきた。いつかはお金持ちになれるはずと考えていたものの、一向にその時はやってこない。コビが竪琴で稼いだお金は羽が生えたように消えてゆく。どんなに働いても、奴隷のような暮らしだ。
「一体お金持ちはどうやってお金を得ているのか? そのすべを知る方法はないか」と思案したふたりは、バビロンで一番の金持ちになった共通の友人アルカドのもとへ、金持ちになるための方法を教わりにいく。
アルカドを訪れたバンジールとコビは、「同じ師のもとで学び、同じ遊びに興じた。学問でも秀でていたわけでもないし、とりたててりっぱな市民だったわけでもない。働きぶりを見ても勤勉でも献身的だったようにも思えない。どうやってバビロン一の大金持ちになったのか?」とアルカドに質問を投げかけた。
アルカドは若かりし頃、金貸しのアルガミシュに出会い、お金持ちになる方法を学んだと打ち明けた。アルガミシュが最初にアルカドに教えたのが「稼ぎの十分の一以上を貯蓄すること」だった。
アルカドは、「必要ならほかの出費を抑えてでも蓄えなさい」と強調する。自分のものと言えるだけの財産ができると豊かな気持ちになり、励みも増す。もっと稼ごうという意欲が湧いてくる。
その後は財産を失うことのないように、細心の注意を払って投資する。財産が産んだ「子どもたち」を、自分のために働かせる。そうすることでアルカドはお金持ちになれたのだ。
バビロンの王はバビロンをより栄えさせるため、お金持ちを増やそうと思い至る。そこでバビロン一のお金持ちであるアルカドを召集し、富を手にする秘訣を人々に伝えるよう命令する。
アルカドは生徒百名を集め、お金持ちになるための七つの道具を教えた。
第一の道具は「収入の十分の一を貯金せよ」というものだ。素朴だからと言って侮ってはならない。十枚のうち使うのは九枚までとする。すると財布が太り始める。しかも稼ぎの十分の一を貯蓄したとしても、暮らし向きは少しも悪くはならない。それどころか以前よりお金が流れ込んでくるようになる。
第二の道具は「欲望に優先順位をつけよ」というものだ。必要な出費を消費欲と混同してはならない。人はみな自分で満たせる以上の欲望を持っているものだ。お金をどれだけ稼ごうとも、消費欲を満たすために使われかねない。慣れ親しんだ生活習慣を徹底的に見直す必要がある。今まで当然と見なされてきた出費の中にも、削れるものがあるだろう。そして必要な出費の予算を組む。予算が気まぐれな欲望を抑えてくれる。常に予算内で暮らすことで、痩せた財布を太らせることができる。
第三の道具は
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