戦略とは、競争にさらされた組織がいかにして卓越した業績を達成するのか、その方法を説明するものだ。
そもそもの競争の本質としくみに対する思い違いは、戦略の誤りを招く。なかでも最もよくある誤解が、競争に勝つには「最高を目指す」のが一番だというものだ。すべての競合企業が「唯一最善の」方法で競争すれば、企業は互いの慣行や製品を参考にし、衝突するコースをまっしぐらに進むことになる。
戦略的競争とは、他社と異なる道筋を選ぶことをいう。我々は、「最高を目指す競争」ではなく、「独自性を目指す競争」をしなければならない。そのためには「一位になる」のではなく「収益を高める」、「市場シェア重視」ではなく「利益重視」、「最高の製品によって最高の顧客に対応する」のではなく「ターゲット顧客の多様なニーズを満たす」、「模倣による競争」ではなく「イノベーションによる競争」、「ゼロサム競争(誰も勝てない戦争)」ではなく「プラスサム競争(複数の勝者、多くの土俵)」という視点が欠かせない。
競争の主眼はライバルを負かすことにあるのではなく、利益を上げることにある。ビジネスにおける競争の本質は利益をめぐる競争だ。基本となる利益の方程式は、「利益=価格-コスト」である。
ポーターが提唱しているフレームワーク「五つの競争要因」を使えば、どんな業界構造でもわかりやすく表すことができる。その構造によって、収益性が決定される。原則として、それぞれの競争要因の影響が強ければ強いほど、価格やコストに対する圧力が強まる。
「五つの競争要因」とは、
・買い手の交渉力
・サプライヤーの交渉力
・新規参入者の脅威
・代替品や代替サービスの脅威
・既存企業同士の競争
である。
「五つの競争要因」を考えながら業界分析を行う上での典型的な手順としては下記のとおりだ。
(1)業界を「製品の範囲」と「地理的範囲」の二つの面から定義する。「製品の範囲」とは、業界に含まれる製品、業界に含まれない製品の線引きのことだ。また、「地理的範囲」とは、市場やサプライヤーなどに大きな違いのない範囲のことだ。
(2)五つの競争要因を構成する当事者を特定し、必要に応じてグループに分類する
(3)五つの競争要因を促進する要素を分析する
(4)一歩下がって全体的な業界構造を見極める
(5)それぞれの競争要因の最近の変化と将来起こりうる変化を分析する
(6)五つの競争要因に対して自社をどのようにポジショニングできるか検討する。
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