ファーウェイが、目を見張る成果を出し続けているのには理由がある。それは、第一線で顧客獲得に奮闘しているマーケティング部隊が、必要なサポートやリソースを自ら要請できるからだ。こうした彼ら独自のルール・方針は、「以客戸為中心、以奮闘者為本(顧客第一主義、奮闘者が基礎)」というシンプルな12文字の原則を踏まえたものと言える。ここでは、この考え方をより深く理解するために三つの例を挙げたい。
一つは、深圳本社を「本社」と呼ぶことを禁じて「事務所」と呼ぶという点だ。彼らはあくまでも現場がビジネスの中心という信念を貫いており、それは役職設計にも現れている。例えば内部スタッフのマネジャーより、現場のマネジャーの役職のほうが高いのもその一環だ。
二つ目は、顧客起点で社内のワークフローを変更できるという点だ。つまり、現場が社内を強くひっぱることが奨励されており、現場が社内の動きを変えるのが普通のこととなっている。
三つ目は、現場に大きな権限を与えている点である。第一線の「ひよっこ」でも、プロジェクトで必要ならば見ず知らずの事務所(本社)の幹部に、真夜中でも電話をかけることができる。もちろん相手はその電話を取らなければならない。これが、ファーウェイの最前線の従業員に力を与えるメカニズムである。
任正非のスピーチには、「少将兼中隊長」という言葉がよく出てくる。これはファーウェイの高級幹部が末端組織のリーダーとして重大プロジェクトを指揮し、高いレベルで顧客との関係を構築する状態を表している。こういった人事が可能なのは、幹部を選抜する際、実践で成功した者や主力の戦場で苦労した者から優先しているからだ。もちろん、たたき上げだけでなく、異才を発揮した者、新しい手法でワークフローやマネジメント体系を構築した者も評価されることは言うまでもない。
ファーウェイでは、従業員へのメッセージにおいて「ダンコの物語」(ゴーリキー作)が取り上げられたことがある。これは、自身の心臓を燃やして仲間を助けた英雄の物語だ。
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