私たちはいま、世界中で深刻な問題に直面している。若年層の失業、先進国における収入格差や貧困、重大な気候変動の兆候などがそれに当たる。これらの問題は一国や地域にとどまらず、誰も責任を持って取り組まない事態が起こりかねない。だからこそ今、何らかの手を打たなければならない。
過去数十年間は、各国政府や、世界銀行などの国際機関が問題解決の主体となっていたが、近年はグローバル企業がこうした問題への影響力を高めている。
金融危機、原油流出、経営陣への過剰な報酬、敵対的買収などのマイナスの側面が公になった結果、人々は企業を強欲で邪悪、貪欲で利己的なものと考えている。
しかし、「企業は悪」という考えは、言うまでもなくその本質を見誤ったものだ。企業は本来人間の集まりであり、チームであり、コミュニティである。正しい人材が正しく舵を取れば、こうした問題に立ち向かうためのイノベーションを見出すうえでカギとなる役割を担うことができるのだ。
その中核にある、もっとも重要な能力は「レジリエンス」である。その元の意味は、「負荷がかかって変形したものが、元の形状に戻る力」のことだ。これが転じて、ストレスからの回復力、困難な状況への適応力、災害時の復元力という意味でも使われるようになった。
ますます複雑化する世界の中でも、変化に備えるための手掛かりがゼロというわけではない。これから数十年の間に企業と仕事のあり方に大きな影響を与えると思われる7つのトレンドを紹介しよう。
1.商品と労働のグローバル市場のバランス変化
グローバルなリバランシングは、労働人口が集中する場所が変わることが起因となるだろう。先進国の労働人口は2010年から2030年までに8億3500万人から7億9500万人に減少するが、新興国では約10億人増えて46億人に達すると見込まれている。労働人口分布の変化に伴い、イノベーションや新しいアイデアが生まれる場所も変化する。中国やインドがイノベーションハブを形成しつつあることも見逃してはならない。
2.人間と仕事が高度につながった社会
2010年時点で50億人が携帯電話を所有し、2020年には60億人を超える。どこからでもつながれる状況になり、有能な人材はグローバルの求人市場にアクセスし、イノベーションを起こす。すでにオーデスク、イーランス、グルといったプラットフォームが企業とスペシャリストの橋渡しをして、世界中からウェブデザイナー、ソフトウェアプログラマー、翻訳者などの仕事を探すことができるようになっている。
3.有能な人材の偏在
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