「紙1枚」は、資料作成法ではなく、わかりやすく情報を整理しまとめ相手に伝える力を磨くための思考整理法である。「紙1枚」を書くことで、情報を整理し、自分の考えをまとめ、伝える力をつけることができる。
この思考整理法は、仕事における「型」のようなものだ。仕事では、情報を整理し、まとめ、伝えることを求められる機会が多い。しかし、そのやり方自体を教えてもらえる機会は少ない。著者は、トヨタで働く人たちが日々実践している「紙1枚」にまとめる技術を研究してきた。その結果、誰でも簡単にできる思考整理法としてまとめあげたのが本書である。
「紙1枚」を書けるようになること自体が最終目標ではない。「紙1枚」の作成を通して、紙に書き出さずに、「紙0枚」で高度な思考整理力とコミュニケーション能力を発揮することこそが、最終目標だ。
書類にはそれぞれ「果たすべき役割」がある。会議の議事録であれば、会議に出席していない人にも要点が伝わらなければならないし、企画書であれば会社の上司や役員、社長などにゴーサインを出してもらえるよう促してこそ価値がある。
著者の勤務していたトヨタでは、書類を「紙1枚」にまとめる文化があった。業務を通して累計3000枚以上の「紙1枚」に触れてきた著者は、わかりやすく伝わる書類に共通する、以下の3つの特徴を発見した。
(1)ひと目で全体が見える(一覧性)
(2)枠がある(フレーム)
(3)枠ごとにタイトルがついている(テーマ)
これらは特にすごい特徴とは見えないかもしれない。しかし、この特徴こそが、「紙1枚」がよく機能するための重要な仕掛けになっている。
例えば、あなたがテーマパークでアトラクションの場所を聞かれたとしよう。記憶を頼りに口頭で場所を伝えたり、自分だけが地図を見て言葉で説明したりしようとするよりも、持っている地図を相手に見せ、現在地と目的地を指でさした方が、少ない言葉でより正確に、短時間で情報を伝えることができる。
「読んでわかる」のではなく「見てわかる」ことを目指すトヨタの「紙1枚」は、この“地図”のような働きがある。それを可能にしているのが、先述の3つの特徴だ。
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