個性によって、学びに最適な方法は異なる。自分に最適な学習方法を見つけるための第一歩は、FFS理論に基づき、自分の個性を知ることだ。
FFS理論では、「凝縮性」「受容性」「弁別性」「拡散性」「保全性」という5つの因子の差に注目し、ある人の感じ方や捉え方を計量化する。なかでも勉強に最も影響を与えているのは、「拡散性」と「保全性」である。「拡散性」の高い人は「概念化型の学び」が得意で、「保全性」の高い人は「体系化型の学び」が得意だ。
自分は「拡散性」タイプかそれとも「保全性」タイプか。正確に調べるには本書にある自己診断を試してみていただきたいが、ここでは簡易的に調べる方法を紹介しよう。
「水泳を覚えるにはまず水に飛び込むこと」と聞いて、どのように感じただろうか?「それはそうだ、まず飛び込まないと」と思ったならば、あなたは「拡散性」の高い人である。一方で「それは怖い、ちゃんと水泳の基本を理解してから」と思ったならば「保全性」の高い人だ。
「拡散性」の高いタイプと「保全性」の高いタイプでは、何かを新しく学ぶとき、その取り組み方や獲得した情報を知恵へと昇華させる方法が異なってくる。この「学び型」の違いを理解して自分に合った学習スタイルを選ぶことで、学習効率を劇的にアップさせることができる。
「拡散性」の高い人は、「面白そう」「好きだな」と思ったらすぐアクションを起こす。未知の領域への挑戦であっても、とりあえずやってみる。失敗するとは思っていないし、失敗してもくよくよしない。『ドラゴン桜』の登場人物なら、大沢賢治が「拡散性」タイプである。
このタイプの人にとって、学びのキーワードは「体験」だ。気の向くままにさまざまな分野に触れ、失敗や成功を体験し、「普遍性」や「法則性」に気付く。
「拡散性」の高い人の学び型は、「脈絡のない体験を繰り返しながら、一つの概念に昇華させていく」だ。余分なものを削ぎ落として物事の本質にせまっていく「概念化型の学び」である。
「拡散性」の高い人の学習では、「体験の質」を上げることがポイントとなる。一つひとつの体験を通して、「こうするとうまくいく」「こうすると失敗する」という仮説・検証をくり返し、概念化にたどり着く。
「保全性」の高い人は、「面白そう」「好きだな」だけでは動き出せない。「失敗したくない」「確実に実現させたい」という気持ちが強いので、入念に準備をし、計画を立てて、慎重に進めていく。
このタイプの人はまず、情報収集に取り組む。情報を集めてリスクを減らし、「これなら着実に進めていける」と確信できてから、ようやく動き始める。
「保全性」の高い人の学び型は、獲得した知識を系統化して整理し、いつでも引き出せるように「体系化」していくことにある。体系化された知識の代表格、教科書は、「保全性」の高い人にとって安心できる教材だ。
「保全性」の高い人の学習では、知識をきちんと積み上げることがポイントとなる。ある分野に関して本を読むなら、同じテーマの本を何冊か読んで、その分野の全体像をつかむ。隙間なく順序よく知識を積み上げていくことで、物事を理解するための「軸」を作りあげていく。その結果、ただ知識を記憶しているだけでなく、問題に直面しても「あの体系が応用できるのでは」と推論して対応できるようになる。
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