今後すべてのビジネスパーソンにプロジェクトマネージャーとしての力量が求められるだろう。これまでホワイトカラーの仕事の多くは、ルールやマニュアルに沿ってルーチンワークをこなせばよかった。しかし、ここ10年ほど状況の変化は加速度的であり、従来のルールでは対応できない事象が頻発している。
機能不全のルールに判断基準を置き、目の前の仕事を処理していく業務能力は、無価値となりつつある。
一方で目的と価値観に立脚し、自分の判断で物事を進めていくプロジェクトマネジメントの能力が一層求められるようになっている。
「勝てるプロジェクト」を見極め、自分の身をそこに置くのはプロジェクトリーダーとして成功するために重要なポイントである。軍事でもマーケティングでも同じことが言える。たとえば連戦連勝で知られた「作戦の天才」ナポレオン・ボナパルトの「強さ」の秘密について『戦争論』で知られる軍事学者クラウゼビッツは「勝てる闘いしかやらなかったから」と指摘している。
1793年、英仏両軍は重要拠点のトゥーロン港をめぐって消耗戦をくり返していた。ここで若きナポレオンはトゥーロン港を直接攻撃するのではなくトゥーロンの内港と外港をつなぐ位置にあるレギエットの要塞を攻略し、イギリス軍にとって不可欠な海からの補給を断つ作戦を将軍に進言した。この進言は一度は断られたが、最終的に採択され、フランス軍は勝利している。
ナポレオンがやったことは「勝てない闘い」を避け、「勝てる」かつ「意味がある」戦場を見つけ出すことだったのだ。
どうやって「勝てるプロジェクト」と「勝てないプロジェクト」を見極めるのか。まず知っておきたいのが「目的が不明確なプロジェクトはポシャる可能性が高い」ことだ。「そもそも、何のためにやるのか?」という問いに明確な答えがないプロジェクトは危険だ。たとえば「複線型人事制度を導入する」「サプライヤーを集約する」「管理会計システムを導入する」などはすべて「手段」であり「目的」ではない。しかし、こうした「手段」が「目的」になってしまっているケースは多い。
目的がないことによって引き起こされる問題は、大きく分けて2つある。
1つは目的が明確でない場合、プロジェクトに問題が起きた際に迂回路を取れないことだ。目的が明確なら、最初にやろうとしていた手段に何か問題があるとわかった場合でも代替手段を採用し、目的を達成できれば何も問題はない。しかし目的が明確でなく手段だけが合意されていると、他の手段を取れずプロジェクトが暗礁に乗り上げてしまう。
2つ目の問題は、メンバーの管理が難しくなることだ。メンバーに裁量を委ね、実力を発揮してもらうには「○○をやれ」という具体的な行動の指示ではなく、「○○を達成しろ」という目的を伝達することが重要となる。そのため、目的の明確化が欠かせない。
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