グラフィックファシリテーションの教科書

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グラフィックファシリテーションの教科書
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グラフィックファシリテーションの教科書
出版社
かんき出版

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出版日
2021年07月14日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

グラフィックファシリテーションは、絵(形)や線、色といったグラフィックを用いて、話し合いをより豊かで面白いものにするためのものである。言葉にならない参加者の深層の気持ち(本書では「エッセンスレベル」と呼ばれる)を、グラフィックによって浮かび上がらせ、より本質的な対話を実現しようとする方法だ。

ではなぜこの手法にスポットライトが当たっているのか。それは、言葉にならないものや目に見えないものに意味や価値を見出す時代になったからだ。そうしたものはモヤモヤしている。そのモヤモヤに寄り添い、それを図や色で表現しようとするのがグラフィックファシリテーションという試みなのだ。さらにそれは、誰もがもっている「こうしたい」という衝動(アート性)を解き放ち、未来の社会を描き出すアプローチともいえる。その根底には、人はみな生まれながらにアーティストであるという著者の信念がある。

本書を開くと、グラフィックファシリテーションの世界観が直感的に伝わってくるカラーの絵が目に飛びこんでくる。主体的に参加できる場づくり、グラフィックファシリテーション実践のポイント、ファシリテーターのあり方などが、この一冊に凝縮されている。その説明は実にわかりやすく、組織開発の入門書としても画期的な一冊ではないかと思う。

職場の心理的安全性や関係性の質が課題とされるいま、グラフィックファシリテーションの可能性にぜひふれてみていただきたい。

ライター画像
しいたに

著者

山田夏子(やまだ なつこ)
一般社団法人グラフィックファシリテーション協会 代表理事、株式会社しごと総合研究所代表取締役社長、システムコーチ/クリエイティブファシリテーター。武蔵野美術大学造形学部卒業。大学卒業後、クリエイターの養成学校を運営する株式会社バンタンにて、スクールディレクター、各校館長を歴任。その後、人事部教育責任者として社員・講師教育・人事制度改革に携わる。同社にて人材ビジネス部門の立ち上げ、キャリアカウンセラー、スキルUPトレーナーとして社内外での活動を行う。教育現場での経験から、人と人との関係性が個人の能力発揮に大きな影響を与えていることを実感し、その後独立。
2008年に株式会社しごと総合研究所を設立し、グラフィックファシリテーションとシステム・コーチング®を使って、組織開発やビジョン策定、リーダーシップ事業を展開する。小さな組織から大企業までのチームビルディング、教育や地域コミュニティなど様々な現場で活躍、これまでに携わった組織は950社以上。また、グラフィックファシリテーター養成講座も開催し2000人以上が受講。愛あふれるファシリテーションに参加者が涙することも多い。
2017年から2018年3月までの約1年間NHK総合『週刊ニュース深読み』にグラフィックファシリテーターとしてレギュラー出演。また、2021年5月にはNHK総合『考えると世界が変わる「みんなパスカる!」』でも、グラフィックファシリテーターとして参加し話題を呼ぶ。
監訳書に『場から未来を描き出す―対話を育む「スクライビング」5つの実践』ケルビー・バード著(英治出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    話し合いや会議には、「議論」と「対話」がある。対話は、結論を出すことに固執しない。参加者が互いの異なる意見や主張の背景を深く理解し合うことを大切にする。
  • 要点
    2
    主体的な合意形成に至るためのポイントは、参加者が「ぜ~んぶ出しきった!」と思うくらい拡散することと、目的を握ることだ。
  • 要点
    3
    ファシリテーターは「合意的現実レベル」「ドリーミングレベル」「エッセンスレベル」という3つの現実を行き来する。

要約

グラフィックファシリテーションを知ろう

参加者が主役のファシリテーション

ファシリテーションを直訳すると「促進する」という意味になる。では何を促進するのだろうか。本書では、話し合いや会議の参加者が「目的」を自覚し、主体的に「場」で話し合い、主体的に決められるよう促進していくこととしている。ポイントは、場の主役はファシリテーターではなく、参加者であるという点だ。

また、グラフィックファシリテーションの特徴は、ファシリテーターという「人」ではなく、形や線や色といった「絵」でファシリテートすることである。

場には議論と対話がある
本書p14@Natsuko Yamada

「議論」は結論を出すことが前提になる。ときには結論を急ぐあまり、話し尽くすことなく終えてしまうことがあるだろう。そのため、結論に納得していない参加者から、後で「本当はこうしたかった」「そもそもよいと思ってなかった」と、不満の声が起きることもある。

これに対し「対話」は結論を出すことに固執しない。場の参加者が、お互いの異なる意見や主張と、その背景を深く理解し合いながら、「主体的な合意形成」に至ることを目指すのだ。

私たちは話し尽くす前に結論を出したがる傾向にある。そのため、グラフィックファシリテーションでは、あえてその傾向に待ったをかける。そして、意識的に対話に踏みとどまるようにグラフィックを使って働きかけていく。

【必読ポイント!】 主体性を持ち、目的を握る

主体的な合意形成

主体的な合意形成の「主体的」とは、周りから強制されるのではなく、自らの意思で目的をつかみ、行動することを意味する。では、どうしたら参加者が主体的になるのだろうか。

対話の大きな流れは「拡散」から「収束」へと向かっていく。そのなかで1つめのポイントは、まず参加者が「ぜ~んぶ出しきった!」と思うくらい拡散することである。

それを後押しするのが絵(グラフィック)だ。色や形や線のゆらぎによって、参加者の信条や発言の背景を浮かび上がらせて共振を引き起こす。場を活性化することで、参加者の間からさまざまなインスピレーションやアイデアが湧いてくる。

また、図解やフレーム、チャートといった「図」は、参加者の発言を「構造化」することによって収束を後押しする。

場の目的を握る

参加者が主体的になるためのもう1つのポイントは、みんなで「場の目的」を握ることだ。

目的を握るとは、参加者一人ひとりが、次の2つの意味を明確につかんでいる状態を意味する。

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要約公開日 2021.08.31
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