ノーコードとは、非エンジニアがプログラミングすることなく、「ウェブアプリケーション(サービス)を作ることができる」、「提供されている機能を自由に拡張できることでテクノロジーの恩恵を受けられるようになる」ツールのことである。
1990年代には既にウェブサイトを簡単に作れるソフトウェアが販売されていたように、ノーコードという概念はインターネット黎明期からあった。
クラウド技術が普及したことで、ソフトウェアを一括購入するのではなく、利用した期間の分だけ使用量を支払うSaaS(サース)と呼ばれる形態が一般化した。複数のシステムの間で簡単にデータを連携できるAPIのシステムが発展したことが、現在のノーコードの大きなブームの技術的要因となっている。
現代社会は、多様性の広がりを踏まえ、さまざまな価値観を持つ小さな集団が無数に存在している状況だ。そのため、大量消費的な商品・サービスが受け容れられにくくなっている一方で、個人や小さな集団の個別の需要に合わせた「ニッチ市場」への対応が求められるようになった。
従来は、ニッチな需要に応えるサービスを開発しようにも、初期投資と成果が見合わず、リスクが大きかった。だが、ノーコードであれば、わずかな費用と時間ですぐにサービスを開発できる。リスクが少ないだけでなく、金銭的報酬を得られ、ニッチな需要を持つ人たちからは感謝されることだろう。多様化し、複雑化した社会において、課題や要望を自分たちで見つけ、アイデアを出して実現する社会への転換を、ノーコードが可能にしていくだろう。
専門的で高度な技術を持つIT人材を育成するのは時間もコストもかかる。しかし、データベースからデータを抽出して資料を作るといったシンプルな作業を、ノーコード化して誰もができるようになれば、エンジニアはそうした仕事から解放される。そしてデジタル・トランスフォーメーションの推進や技術開発など、本当に必要な作業だけに時間をかけられるようになるだろう。
こうした社会事情を背景に、現在ではノーコードを推進させようとするビジネスパーソンたちが、新しいコミュニティを形成し始めている。
ノーコードが普及したとしても、プログラミング技術やエンジニアの存在が不要になるわけではない。C言語からPHPやRubyへの移行のように、プログラミング言語は、より多くの人が簡単に素早くプログラミングできるように進化してきた。プログラミングすることなく、アプリやサイトを作れるようになるノーコードの概念は、この進化の延長線上にある。
ノーコードで代替されるのは、データベースからデータを抽出してレポートを作ったり、メールの注文内容を受注管理システムにコピペ入力したりといった「定常的IT業務」と、インターネット広告のリンク先となるランディングページの設定など「定型化したプログラミング業務」である。
一方、非定常で非定型の業務は人間が担当しなければならず、代替されることはない。経営資源を最適化するためにも、定常的IT業務や定型化したプログラミング業務はノーコードに任せ、ITエンジニアには、技術開発や課題解決のためのシステムづくりといった、非定常で非定型の業務に専念してもらったほうがよいだろう。
ノーコードのメリットは、スピードの速さだ。例えば、メルカリの基本的な機能を備えたようなアプリの場合、ノーコードを使うと約1時間で実装できる。
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