「嵐」は、2020年をもって活動を休止したトップアイドルグループである。圧倒的な熱量による支持と消費行動を生み出すその「ブランド」は、どのようにつくられたのだろうか。
現在、ブランドを考えるときには、4つのポイントが重要だ。1つ目は、ブランドは人の「頭の中」に存在するということである。ブランドは、そのブランドを信じ、好きになってくれる消費者(=ファン)の頭の中につくられる。ブランドとは、企業の広報発表や広告でアピールされる内容ではなく、消費者の「頭の中」につくり出されている感情やイメージ、言葉などのことなのだ。
ブランド側がメッセージやイメージを一方的に伝えても、それが消費者の頭の中に存在しないと意味がない。商品・サービス提供者は、ブランドのファンおよびファン予備軍を徹底的に理解し、その人たちに向けて情報発信をする必要がある。
2つ目は、「誰の」頭の中に存在するかが重要だということである。好みが多様化している現代においては、ブランドを考えるとき、対象者の選択は非常に重要だ。対象者の選択を誤れば、ブランドはまったく別物になってしまうだろう。
だからこそブランド側は、ほかならぬ「ファン」、そして「ファン予備軍」に向けたブランド構築を意識しなければならない。対象を絞り、貴重なマーケティング資源を集中的に投下するのだ。たとえば嵐のようなグループなら、男性アイドルが好きではない人や洋楽しか聴かない人がファンになってくれる可能性は低い。そうした人はあえてターゲットから外してみるのも戦略の一つとなるだろう。
3つ目は、共感できる「意味ある差異」が必要だということだ。ファンがファンであり続けてくれたり、ファン予備軍がファンになってくれたりするためには、「意味ある差異」への共感、つまり「このブランドでなければと思える違い」を強く感じることが欠かせない。
たとえば嵐なら、ファンに対して「嵐が他のアイドルと違うのはどんなところか?」「嵐のどんなところに共感する(心を動かされる)のか?」を尋ねると、意味ある差異がどのように存在するかを確かめられるだろう。自分のブランドのファンとファン予備軍を理解して、その人たちの共感を得られるような、意味ある差異をつくり出すことが重要だ。そうすれば、中長期的にファンをつなぎとめることができる。
4つ目は、中長期的に愛されるには、存在理由と変化への柔軟性が必要だということだ。ブランドとして譲れない部分はありつつも、ファンの気持ちや変化に合わせて柔軟に対応することがブランドを強くする。
嵐の場合、核となるのは「オリジナルメンバーの5人であること、その5人が強い絆で結ばれていること」だった。一方、デジタル化や音楽配信のスタート、SNS発信、英語を中心とした楽曲に挑戦することなど、新しいチャレンジも忘れなかった。この両方がそろっていたからこそ、長期的にブランドの価値を保つことができたのだ。
嵐がグループとしてデビューしたのは1999年のことだが、当時のメンバーの頭の中には「嵐」としての存在意義や明確なイメージは存在しなかったと推測される。本人たちがその後さまざまな場で冗談まじりに語っているように、「たまたま嵐というグループ名でデビューしてしまった5人」として始まったのだろう。事務所を辞めて違う道に進むことを考えていたメンバーもおり、
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