iPhoneやアンドロイドベースのスマートフォンが乱立していた2014年。競争の激しい市場に遅れて参入してきたのが、アマゾンのファイアフォン(Fire Phone)である。このスマートフォンの特徴は、「電話もできる携帯レジ端末」と言わしめるほどの「買い物体験の向上」にある。カメラでDVDや書籍の表紙を撮影したり、音楽をファイアフォンに聞かせたりするだけで、アマゾンで即購入できる「Firefly(ファイアフライ)」という機能が搭載されていた。
ネットショッピングは便利になったが、検索作業やアプリの横断などの「わずかな障壁」が存在する。この障壁を完全に取り去ることを目指して作られたのが、アマゾンのファイアフォンだ。
アマゾンの期待とは裏腹に、市場の反応は否定的であった。発売2ヶ月後にはファイアフォンの価格は199ドルから99セント(100円程度)まで引き下げられたうえ、アマゾンプライム1年分(99ドル)は引き続き特典として提供されることになった。それでもなお、消費者の反応はいまひとつであった。
時を同じくしてアップルのiPhone6が発売となり、ファイアフォン人気は急速に下火になる。発売3ヶ月の段階で数十万台のファイアフォンが売れ残っており、翌2015年9月、アマゾンはファイアフォンの販売中止を発表した。
ファイアフォンの敗因は、ユーザーがスマートフォンに求めていたものとのズレにある。
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