大げさだと思う人もいるかもしれないが、筋のいい問いができるかどうかで、仕事や人生は大きく変わる。問いを持てないと、ムダなことに時間を取られたり、周囲に振り回されたり、もやもやした気持ちを抱え続けたりすることになってしまうものだ。一方で、「自分が大切にすべきことは?」「本当にそうなのか?」などと、問いを常に持っている人は、成果を上げられて、もやもやがなくなり、周囲からも評価される。
筋のいい問いができることのメリットは、大きく分けて次の6つだ。
(1)バラバラの情報をひとつにする→情報を整理でき、仕事での悩みが減る
(2)物事の核心がつかめ、時短につながる→仕事のムダが減る
(3)異なる物事をつなげて発想を広げる→アイデアがひらめきやすくなる
(4)状況を変える→硬直した状況や行き詰まった思考に突破口が開かれる
(5)人間関係がうまくいく→「説得」型ではなく「質問」型で伝えると、相手が自ら動いてくれる
(6)自分を変えられる→本当に自分が大切にしたいことが腹に落ちるので、すぐ動けるようになる
良い問いを立てるには、問いの「型」と「方向性」を意識するとよい。まずは、どんな問いにも共通する4つの「型」を解説しよう。
1つ目の「型」は「問いは1行にする」だ。「1行の問い」であれば、大事なことだけに焦点が当たる。「短く本質に迫る問い」を立てて、最も重要なポイントに集中しよう。
2つ目は「自身の判断を入れない」である。業務目標を達成できずに悩んでいるとき、上司から「いつも時間管理が甘いよね。だから結果が出せないんじゃない?」という問いを投げかけられると、多くの人は嫌な気分になるだろう。「何が一番気になってる?」「本当はどうしたい?」といった問いのほうが、スッと受け止められて、前向きなアクションを起こしたくなるはずだ。
3つ目は「ポジティブにする」だ。「どうしてうまくいかないのだろう?」という問いと「どうすればうまくいくのだろう?」という問いでは、無意識に抱く感情が違ってくる。前者は「失敗してしまった」という前提であるため、ネガティブな感情を持ったり、自信を失ってしまったりする。一方、後者は「まだ失敗ではない」ととらえられる。「どうしてダメなのか?」という過去に向かう問いではなく、「どうしたらいいだろう?」と未来に向かう問いを選ぼう。
4つ目は「視座を高くする」だ。仕事のやり方を変えてみようという話題が出たときに「そのやり方では現場が混乱する」と反対意見を出した人がいるとする。普通に聞いていれば、「現場の混乱はよくないな」と考えるだろう。しかし、視座を高くして、上司の視座から「この人はなぜそんなことを言うのだろうか」と問いを立ててみると、「自分の仕事をとられるのが嫌なのではないか」という仮説が立てられるかもしれない。
同じ物事に対しても、自分だけでなく「経営者なら」「ユーザーなら」などと、さまざまな視座から問うことを試してみよう。「問い」の回路が鍛えられ、物事を良い方向に進めやすくなるはずだ。
次に、問いの「方向性」、つまり「どこに向けて問うか」である。良い問いは次の4つのうち、いずれかの方向性を持っている。
(1)根本を問う:「そもそも~?」
(2)未来志向の問いである:「そのために、今、どうしたらいいか?」
(3)枠を外す:「本当に大事にしたいことは?」
(4)本当の声をインスパイアする:「そもそもあなたにとって~?」
仕事で問いを活用するには、3つのステップで進めるとよい。
第1ステップは、「状況を的確に把握する=問いで本質をつかむ」だ。たとえば上司から資料作成を依頼されたとき、相手がどんな資料を求めているのかによって、対応は変わってくる。「その資料をどこで使うのですか?」「その資料は何のために使うのですか?」などと問いかけてみると、資料を必要としている理由や背景がわかるはずだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる