著者が代表を務めるクロスリバーでは、これまで800社超17万人のビジネスパーソンの働き方改革を支援し、多様な行動履歴を取得してきた。その中で、ユニークな工夫を凝らし、自ら行動実験をしながら成果をあげている「活躍社員」が多く存在することがわかっている。そのような活躍社員の行動履歴や言動データを収集し、AIと専門家による分析を行った結果、一般社員との違いを明らかにすることができた。
そこで著者は、活躍社員の行動習慣を一般社員に展開させる再現実験「エンパワーメント・チャレンジ」によって、成果と働き方の変化を検証した。対象は複数のクライアント企業で、実験期間は4年以上にわたる。
17万人を対象とした調査では、「社内会議」と「資料作成」に最も多くの労働時間を費やしていることがわかった。また活躍社員へのアンケートによると、「円滑なコミュニケーション」と「ITの使いこなし」が成果に直結しやすいという結果が出ている。
その結果を踏まえて著者は、「社内会議」「資料作成」「プレゼンテーション」「巻込力アップ」「対話」「ITツール」「時短」という7つの領域において「エンパワーメント・チャレンジ」を行い、成果が出たものを50のルールにまとめて、本書で紹介している。要約ではそのうち「社内会議」「資料作成」「プレゼンテーション」「対話」のルールを取り上げる。
クロスリバーの調査によると、社内会議には、働く時間のうち43%もの時間が費やされていることがわかっている。成果につながらないムダを排除すれば、大きな時間が生まれるはずだ。
アンケート調査では、61%の会議ではアジェンダが設定されておらず、「会議を開くことが目的になっていて、アウトプットが出ていない会が多い」ことが明らかになった。加えて、25社、9,000時間以上の会議を調査した結果、「目的が明確に決まっている」「アジェンダが事前に共有されている」「必要な人が参加している」の3要素が揃っている場合に会議の成功率が高まっていた。この調査結果をもとに「アジェンダが24時間前までに共有されていない会議は禁止」というルールを作り、25社で行動実験を行ったところ、参加者の満足度は高くなり、会議時間は8%減少した。
最初の1分と最後の5分に力を入れることも、会議を成功させる秘訣である。人間の記憶は90~120分の間に約7割を失うというが、調査によると、会議の最初の1分と最後の5分で聞いた内容を強く記憶している人が多かった。それならば、最初の1分と最後の5分にエネルギーを注げばいい。
では、具体的にどうすればいいか。活躍社員は、冒頭の1分で参加者の名前を呼びながらアジェンダを共有していた。「本日のアジェンダは3つです。1つ目は情報共有で、営業部のヤマダさんに1分説明してもらいます」といった具合だ。これをルール化したところ、名前を呼ばれる緊張感によって、発言する人が確実に増えたことがわかった。
最後の5分では、「まとめスライド」を見せるのがおすすめだ。活躍社員が作成していた「人を動かすことができた資料」の78%に「まとめスライド」があり、そのうち67%に「〇〇さんには、お客様に必要な情報と人を週に1回提供していただきます」などといった「相手に求める具体的な行動」が記載されていた。
会議の時間管理で重要なのは、発言時間を絞っていくことだ。とくに会議の前半で、役職者が1人で長く話してしまうと、時間オーバーになりがちだ。
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