リーダーシップを発揮するためには、自らの人格に目を向け、信頼性を築く「セルフ・リーダーシップを発揮する」プロセスが必要不可欠である。リーダーシップというと、周囲に働きかけようとすることが多い。しかし、誰も直接的に他人の考えや行動を改めることはできない。できるのは自分自身のパラダイムや行動を変え、周囲が影響を受けることで、変化を起こすことだけである。そして、そのために必要なのが、はっきりしたビジョンだ。リーダーシップを発揮する人たちは、外的な状況に左右されることなく、自主的に判断しビジョンに基づいた行動を選択することができるのだ。
リーダーシップの役割は、もう一つある。共通のビジョンと目的を持って働けるように、社員を鼓舞することである。戦略的なリーダーは、愛情を持って社員を鼓舞し、補完的なチームを作り上げることができる。ただし、効率よりも効果を重視し、方法、手段、システムよりも方向性と結果を重視する姿勢が大事だ。
さらに、リーダーシップは、パラダイムシフトをしていかなければならない。その一つとして、褒美と罰によって生産性を向上させようとする原始的な「アメとムチ」のビジネスパラダイムから離脱し、「社員や部下に正しい原則を教え、彼らが自分自身のボスになり原則を遂行する」という新しいパラダイムに移すべきである。
リーダーシップを発揮したい、周囲に影響を及ぼしたいと思うとき、誰もが陥ってしまうのが、最初から「指導する」行動をとってしまうことだ。他人に影響を及ぼしたければ、思いやり溢れる人間関係を築く必要がある。そして、人間関係を築くには、まず他人の誠意を信じることだ。心からの信用は、ほとんどの人の隠された能力を解き放つはずである。
人とコミュニケーションしているときは、五感のすべてを使って、本当に集中して共感による傾聴をすることだ。人は本当に理解されたと感じたときに初めて、他者の影響を受け入れようとするものなのだ。相手はこう思っている。
「私に影響を及ぼしたいのなら、まず私を理解してほしい。私の考え方や立場、状況を本当に理解していなければ、どうやって助言やアドバイスをしていいのか、あなたに分かるはずがない」「あなたがどれだけ知っているかは気にしない。あなたがどれだけ気にしてくれているかが知りたい」
他人に変革をもたらし能力を向上させる第一歩は、その人のあるがままを受け入れ、その人の内在的価値を肯定することなのだ。つまり、リーダーシップとは、傾聴することなのである。
リーダーシップは、自分自身を内面から変えるインサイド・アウトの変化から始まる。このインサイド・アウトには次の4つのレベルがある。レベル1:個人、レベル2:人間関係、レベル3:チーム、レベル4:組織である。
個人のレベルにおける信頼性は、人格と能力に基づいている。多くの誠実で素晴らしい人々が、次第に職場での信頼性を失っていくのは、彼らの能力が組織の中で「時代遅れ」になってくるからである。
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