あなたは「いつも話をちゃんと聞いてくれない」と言われたことはないだろうか。このとき自分と相手の間には、「聞くこと」の解釈に違いが生じている。
「聞いてるよ」と答える人の多くは、「言葉」を聞いており、内容はしっかりと把握しているはずだ。だが「話を聞いてほしい」と言う人の多くは、その話の奥にある「感情」を聞いてほしいと思っている。多くのコミュニケーショントラブルは、このすれ違いが原因だ。
ここで、あなたの周りの「聞き上手な人」を思い浮かべてみてほしい。どうだろう? 「あの人は話し上手だ」という人はすぐに思い浮かんでも、「聞き上手な人」はなかなか思い当たらないのではないだろうか。聞き上手は、それくらい貴重な存在だ。
2020年初頭に始まった新型コロナウイルスの流行は、私たちに大きな不安を与えた。その不安は、いまだ多くの人が抱えているだろう。
そんな今、人が求めているのは、不安の逆にある「安心感」だ。安心感は、興奮や喜び、幸福、達成感など、すべてのプラスの感情の基礎になる。心理学者であるマズローの欲求5段階説を見ても、それは明らかだ。
著者は2019年に発刊された『人は話し方が9割』で、人間の3大心理として「人は誰もが自分のことが一番大切であり、自分に一番興味がある生き物である」「本来、誰もが自分のことを認めてほしいし、自分のことをわかってほしいと熱望している」「人は自分のことをわかってくれる人のことを好きになる」と述べた。また脳科学的な研究から、人は話すことによって心理的な快感を得ていることがわかっている。つまり人はみな、「話すことによって快感を得たい」と感じると同時に、「誰かに自分の話に共感してもらって安心したい」とも感じているのだ。
本書では、聞く力を磨くことの7つのメリットが紹介されている。
1つ目は、語彙力が少なくてすむことだ。話すには多くの語彙が必要である一方、聞く際に必要な単語はせいぜい100個ほどである。
2つ目は、インプットが増えることだ。相手の話によって、耳からインプットできる。
3つ目は、人の感情が読めるようになることだ。聞くことは、相手の言葉の奥にある感情を読む訓練となる。
4つ目は、相手を不快にさせるリスクが減ることだ。話を聞けば、相手の情報が集まり、リスクを回避できる。
5つ目は、自分の盲点が見えてくることだ。自分にない経験や自分の知らないことについて教えてもらえて、あなたの人生の幅が広がっていく。
6つ目は、沈黙をおそれなくてすむことだ。沈黙が訪れても、聞く側が焦る必要はない。
7つ目は、周囲からの評価が上がることだ。どっしりと話を聞いているだけで器が大きく見え、ゆとりある印象を持ってもらえる。
本書では、聞き上手たちが自然とやっている「魔法の傾聴」として、
3,400冊以上の要約が楽しめる