アイオワからカリフォルニアに引っ越してきたばかりの著者の義父は、「この辺は、ずいぶん犯罪が多いんだねえ」といった。義父がそう考えたのは、地元の犯罪も遠くアイオワの殺人事件も掲載する新聞に、カリフォルニアの犯罪が多く載っていたからだ。あるサンプルをもとに導き出されている以上、これはまがりなりにも「統計的」な結論である。もちろん、新聞記事のスペースの大きさで犯罪の発生率をはかれるとみなしているのだから、妥当性があるとはいえない。
実際のところ、こうした考え方は多くの統計数字にも見られる。統計的な手法や統計用語は、膨大なデータを記録する上で欠かせないものだ。しかし、正しく理解して使わなければ、結果はナンセンスな言葉遊びにすぎないものとなる。
この本は統計を使って人をだます方法についての入門書である。泥棒やサギ師の手くだを知っていることで、正直な人たちはだまされにくくなる。統計でだまされないためには、だますテクニックを知っておかなければならないのだ。
雑誌「タイム」にこんな記述があった。「1924年度のエール大学卒業生の年間平均所得は2万5111ドルである」。こんなに所得が多いのならば、子供をエール大学に入学させておけば老後も安泰と考えてよいのだろうか。
この数字を疑いの目で見てみると、びっくりするほどくわしく、考えられないほどすっきりした数字であることに気づくはずだ。その上、これは卒業生たちが自分の所得として“知らせて”きた額をもとにしている。
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