人生の真ん中は50歳だ、と出口氏は語る。人生を80年と考えて、まず親元で育ててもらう20年を引く。自分の力で生きる60年を半分にして、20年に足すと50歳となる、という計算だ。
50歳になると、自分のことがよく見えてくる。子どもがいる場合は、その子の行く先も見えてくる。ここが真ん中と認識して、50歳までどう生きるか、50歳からどう生きるかを考えておくのは大事なことだ。
あなたはどんな人生を送りたいだろうか。出口氏が決めているのは、「悔いなし、遺産なし」の人生を送ることだという。
さまざまな本を読んで、多くの先人たちが死ぬ間際に考えたことを知ったが、やはり、「あれをやっておけばよかった」という悔いが少ない人生が、最も幸福な人生なのだと思うようになったそうだ。だから、これをやりたいというチャンスがめぐってきたら、思い切ってやることにしているという。
そして、悔いを残さないためにお金を使う。ある程度の年になれば、人生で必要なお金の総量とそのためにとるべき行動が見えてくる。子どもにも、成人したらそれほどお金をかけてやらなくてよくなる。むしろ、経済的にきちんと独立させることが、子どもの自立と市場に労働力を増やすことにつながり、社会全体にとってもプラスになるといえる。
「悔いなし、遺産なし」という人生観の基盤にあるのが、人生の楽しみは「喜怒哀楽の総量」に当たるという考えだ。苦しみや悲しみは、マイナスなのではなく、それ自体も人生の味わいなのだ。悲しみも、喜びと等しく価値がある。そう考えれば、失敗することを怖れずに、いろいろなことをやってみるのが人生の楽しみだと思える。
「人間はみなチョボチョボや」出口氏が、学生時代に愛読したという小田実の言葉だ。つまり、人間の能力にはたいした差はないということである。ウサイン・ボルトの100メートル走の記録、9秒58というのは驚異的な速さだ。しかし、一般男性が13秒前後で走ると考えれば、一般人とボルトの差は2倍もないともいえる。人間同士の能力には、とてつもない差があるわけではないのだ。
加えて、過去の歴史を振り返ってみれば、やりたいことをやり遂げられる人間は、100人に1人くらいしかいない。99人は失敗している。しかも行動の結果は後の時代にならないとわからないケースが多いときている。
人間の能力はチョボチョボ、チャンスや偶然はもちろんチョボチョボ、99パーセントは失敗する、とわかっていれば、チャレンジの失敗にめげる必要はまったくない。
また、翻せば今の世界は、貴重な1パーセントの成功の積み重ねで成り立っていると考えられる。すると、失敗したたくさんのチャレンジがいかに尊いものだったかということが実感できるのではないだろうか。
だからこそ、とにかくやりたいことは可能な限りチャレンジすべし、と出口氏は語る。
仕事は人生のすべてではない。計算してみれば、仕事は人生の3割程度。あとの7割で、人間は、食べて、寝て、遊んで、子どもを育てているのだ。
「デートと残業どちらが大事なんだ」と怒られたことのある人がいるかもしれないが、気にすることはない。出口氏に言わせれば、
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