ESGはEnvironment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の頭文字を取った言葉だ。ESGの具体的な項目としては、それぞれこんなものがある。
E:気候変動対策、生物多様性、水などの自然資源・エネルギー問題など
S:顧客対応、従業員との関係、取引先との関係、人権、地域社会への貢献など
G:株主・投資家との関係、取締役会、コンプライアンス、リスク管理など
売上や利益だけでなく、E・S・Gに配慮した投資は、欧米の株式市場で起こり、今や日本の市場にも浸透しつつある。ESG経営は「新しい会社のルール」になっているのだ。
近年ESGの取り組みが盛んになるなかで、「投資家は利益を追求する人たちのはずなのに、なぜ利益に関係ないことを主張するのだろう?」という疑問が多く聞かれる。この疑問にひと言で答えると「ESGは経済的な価値に関係があることだから」だ。
もう少し詳しく説明しよう。米国には、世界で最大の資産を運用している、ブラックロックという会社がある。ブラックロックのCEOであるラリー・フィンク氏は「気候リスクは、投資リスク」だという。
ブラックロックの事業は、運用によって顧客の資産を殖やすものだ。かなり先の未来まで顧客のお金を殖やすことに責任を持っているため、百年単位で考えて投資方針を決める必要がある。
また、ブラックロックが運用しているお金は1000兆円以上と、日本のGDPの約2倍にのぼるほど莫大であるため、世界中の上場企業数のうちかなりの割合に投資することになる。投資の基本は「投資先を分散してリスクを回避すること」だが、これほどの規模だと、世界経済全体の影響は避けられない。
それを踏まえて「まったく気候変動対策をしない場合、将来かかると予想される世界の経済損失」と「今から対策する場合の世界のコスト総額」のうち、より少なく済むのはどちらだろうか。もちろん、今から対策する方だ。ESGは経済的な価値に直結しており、ESGに対応しない限り長く稼ぎ続けられないことがわかっただろう。
もしあなたの会社が「環境や社会問題は、政府や大企業に任せ、何もしないで様子見が得策だ」と考えているなら、あっという間にビジネスを失ってしまうかもしれない。
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