今日、社会が求める性格のタイプは狭い範囲に限られている。多くの人は、成功するには大胆でなければならない、幸福になるには社交的であるべきだと教えられる。
アメリカは外向型人間の国家といわれるが、それは真実ではない。さまざまな研究によると、アメリカ人の三分の一から二分の一が内向型であるという。アメリカ人の多くは、外向型のふりをしているのだ。
私たちは、外向型を理想とする価値観のなかで暮らしている。社交的でつねに先頭に立ち、スポットライトを浴びることを好む、そんな自己を持つことが理想だと多くの人が信じていることだろう。一方、内向型人間が持ち合わせる感受性の鋭さや生真面目さ、内気さは、二流の性格特性としてみなされている。
だが、外向型人間こそ理想という考えを鵜呑みにするのは間違いだ。進化論からゴッホのひまわりの絵、パソコンにいたるまで、偉大なアイデアや美術や発明の一部は、物静かで思索的な人々によるものである。彼らは自分の内的世界に耳を傾け、そこに秘められた宝を見つけるすべを知っている。科学ジャーナリストのウィニフレッド・ギャラガーは「刺激を受けたときに立ち止まって考えようとする性質は、古来、知的・芸術的偉業と結びついてきた」と書いている。アインシュタインの相対性理論もミルトンの『失楽園』も、パーティー好きな人間の産物ではない。内向性ゆえに成し遂げられた偉業なのである。
世界的なリーダー育成機関であるハーバード・ビジネススクール(HBS)。この1908年創立の名門校の卒業生には、ジョージ・W・ブッシュ元大統領や歴代の世界銀行総裁、ゴールドマン・サックスをはじめとする大企業のCEOたちが名を連ねる。
HBSの教育の本質は、「リーダーは自信を持って行動をし、不十分な情報しかなくても決断しなければならない」というものだ。HBSの授業では、学生たちはよく意見を求められるが、多く発言をする学生ほど評価は高く、おとなしい学生は何かしら欠陥があるとみなされる。後者の場合、教授自身の欠陥ともみなされるため、学校側は寡黙な学生を雄弁にしようと必死になる。HBSは授業での発言について、「55%しか自信がなくても、100%信じているかのように確信を持って話す」ことを推奨しているほどだ。
先述した方針をとるHBSでも、すばやく決断する独断的なリーダーシップは間違っているかもしれないと考える兆しがある。
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