「心理的安全性」とは、自分の考えや意見を率直に言い合える状態を指す。
心理的安全性が注目を集めるきっかけになったのは、グーグルの生産性改革プロジェクトだ。このプロジェクトでは「高い成果を生み出すチーム」の共通点を特定する調査が実施された。
その調査でわかったのが、心理的安全性の高い組織やチームほどパフォーマンスも高いという事実だ。グーグルだけでなく、医療業界や製造業、サービス業など、どんな組織やチームにおいても、心理的安全性はメンバーの能力を引き出し、やる気を高め、生産性を高めることがわかっている。
本書では、心理的安全性を高める「声かけ」フレーズが100種類紹介される。要約ではそのうち10フレーズを取り上げる。
失敗してしまったとき、メンバーはいたたまれない気持ちで一杯のはずだ。そんなときにリーダーから「もう迷惑をかけないでね」と言われたら、罪悪感が募るだけでなく、リーダーに恐怖心を抱くようになるかもしれない。
こうした場面で最も重要なのは、失敗について良し悪しのジャッジをしないことだ。「失敗=迷惑」「失敗=悪」「失敗=恥ずかしいこと」などと判断してはならない。
もう一つ心に留めてほしいのは、「失敗」は組織にとっての「学習の糧」であることだ。課題を特定して、失敗から学ぼう。そしてメンバーには「次に同じ問題にぶつかったら、もう一人で解決できるよ」と声をかける。
リーダーからの期待と信頼を感じ取ったメンバーは、失敗を繰り返さないよう努力するだろう。リーダーの声かけ一つで、「自律的に行動しよう」「失敗を恐れず挑戦してみよう」というマインドが育つ。メンバーの自立や挑戦を促すのは、「恐怖」ではなく「信頼」と「期待」なのだ。
メンバーに苦手な仕事を助けてもらう機会があれば、お礼だけでなく、「私が苦手な仕事を、君は自然にできてすごいなあ」などと褒めるといい。
そのねらいは、リーダーとメンバーのフラットな関係性を作ることだ。「リーダーにも苦手なことがある」「リーダーも助けられる側になることがある」と示せば、上下関係ではなく、フラットに協力し合う関係が作れる。
年齢や役職に関係なく、誰しも得手不得手はあるものだ。互いの違いを尊重し、凹凸を組み合わせれば、組織の心理的安全性はおのずと高まっていく。
また、若手社員にとって「リーダーを助けた」「組織に貢献した」という実感は、自己肯定につながる。実際、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「新入社員意識調査2022」で、新入社員が仕事で重視するものを問うたところ、1位は「貢献」だった。若手社員との対話では、貢献に対して感謝の意を示し、相手の貢献欲求を満たすよう意識するといいだろう。
大型プロジェクトをやり切ったメンバーに対して、「よくやり切ってくれたね」などとねぎらいの言葉をかけるリーダーは多いだろう。この声かけに問題はないが、よりよいのは「最後までやり切った君の姿を、みんなに伝えたい」だ。
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