カブトムシ、クワガタムシ、セミと並んで夏の代表的な虫はなんだろうか。そう、ホタルである。ホタルはわざわざ遠方より運ばれてきて庭園に放たれたり、時には保護区が出来たりと、とくに国民的に愛されている虫と言っても過言ではない。
しかし、そのように愛され、認知度の高いホタルではあるが、光るということ以外に、ホタルの生態を知っている人はほとんどいないのではないだろうか。メレ山氏は、どんな生物なのか詳しく知りたい、という思いから、足立区生物園で催されている鑑賞会、「ホタル見night!」に参加した。
日本には亜熱帯を中心として約50種のホタルがいるが、私たちが普段ホタルとして認識しているのはゲンジボタルかヘイケボタルだ。ゲンジボタルは流れのある川に生息し、ヘイケボタルは水田や湿地に生息する。ともに幼虫の期間は10か月ほどあるという。「はかない印象を持っていましたが、けっこう長生きですね」というメレ山氏の意見には、皆さんも同意なさるだろう。
幼虫期は餌も違う。足立区生物園のスタッフの方によれば、ヘイケボタルはタニシやモノアラガイなど色々な貝を食べるけれど、ゲンジボタルは偏食でカワニナしか食べないそうだ。カワニナはもともと臭みのある貝なので、暑さで腐ると異臭がひどく、それを食べているゲンジボタルの幼虫も臭いのだとのこと。匂いを例えると墨汁のような香りがするそうだ。甲冑を着たような見た目もなかなかごつく、成虫の姿はなかなか想像しにくい。
さて、ホタルの最大の特徴と言えば、やはり光ること。この光るという現象、実は成虫だけのものではないということをご存じだろうか。じつはホタルは幼虫期も光っている。成虫期にホタルが光るのは異性を呼ぶサインであるが、幼虫期は全く反対で、捕食者への「食べてもおいしくないよ」という警告になるらしい。ホタルの幼虫・成虫は窮地に陥ると臭い粘液を出すので、そもそも好んで食べようとする捕食者も少ないらしい。光と粘液で自分の身を守っているのだ。
成虫のホタルの光には、他のホタルを呼び寄せる効果があることは先に述べた。しかしこの光に誘われるのはホタルだけではなく、その美しさに人間も誘われてしまう。夏に儚げに光る姿は、何ともいえない哀愁を帯び人気が高い。ホタルが自生する川の周辺は、重要な観光資源ともなっているようだ。
しかし、人の、ホタルへの愛が時に暴走してしまうことをメレ山氏は警告している。ホタルの里をスローガンに町おこしした結果、養殖池や水路をつくるために元々あった生き物の住みかが潰されたりしている。また、観光客が押し寄せて肝心のホタルが減少し、慌てて他の地域のホタルを移入する、といった皮肉な結果となっている地域もあるという。ホタルの光り方には地域ごとにわずかな差があるため、むげに移入すると、オスメスの交信が混乱して、共倒れになってしまうこともあるという。慎重に、ホタルを大切にしていかなければならない。
等脚目に属し、甲殻類の仲間であるダンゴムシは、近くにある石をひっくり返せばすぐ見つかる、人間にとって最も身近な虫の一つだ。なんと、食べることも出来るという。しかし、メレ山氏が注目したいのはダンゴムシが美味か否かではない。
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