たとえば、広いアスファルトに「駐車場」と書かれた看板がただ置かれているとする。ほかに何の説明もなければ、整備もされていない。そのような場所でも一応車を停めることはできる。だが、秩序立った停め方ができるはずもなく、効率が悪く事故の危険性も高い。
この広場に、ただ白線を引いてスペースを区切るだけで、「あと何台停められるか」「左右の車とどのくらい距離を取るべきか」などが、「パッと見」でわかるようになる。
「特別支援教育」とは、広場に白線を引く作業のようなものだ。なくてもわからないことはないが、あればわかりやすい。なくてもできなくはないが、あればやりやすい。そんなサポートができれば、発達につまずきがある子どもたちの困りごとをグッと減らすことができる。「今の状態では駐車できないあの子が、どんな線を引いたら駐車できるだろう」。そんなふうに考えながら、一人ひとりをよく見て考えて、サポートをする。それが「特別支援」だ。
「特別支援」は「特別な支援」ではない。こうした支援は、形や程度を変え、身近に溢れている。本書では特別支援教育をベースに、困りごとを小さくするためのヒントをまとめた。
特別支援学校で働く著者は、特別支援教育のおもしろさを実感している。そして、特別支援教育は、障害のあるなしに関係なく大事なものだと考えるようになった。特別支援教育がクールな教育だと知っていただければ幸いだ。
特別支援教育と聞くと、障害のある子どものための教育だと思うかもしれない。それはまちがいではない。だが、著者は常々、特別支援教育は障害の“ない”子どもたちにも有効だと考えている。
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