残酷すぎる人間法則

9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する
未読
残酷すぎる人間法則
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9割まちがえる「対人関係のウソ」を科学する
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残酷すぎる人間法則
出版社
出版日
2023年03月31日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書の監訳者である橘玲氏は「残酷すぎる人間法則」を「人生においてただ一つ、本当に重要なものは他者との関係だ」と要約している。そしてその上で「問題は、どうすれば『他者とうまくやっていけるか(Plays Well with Others)』がわからないことだ」とする。

著者のエリック・バーカー氏は、ベストセラー『残酷すぎる成功法則』で、一般的に「成功哲学」とされるものを検証した。続編となる本書では、その手腕を発揮して、他者との関係における「真実」を明らかにする。

「はじめに」で論じるのは、人間関係の潤滑油だとされている「傾聴」についてだ。実は傾聴が効果を発揮するシーンはごく限定的で、夫婦をはじめとする長期的な関係には適さないという真実が示される。

これ以外に著者は、「人は見た目で判断できるのか?」「『まさかのときの友こそ真の友』は本当か?」「『愛はすべてを克服する』のか?」「ひとは一人で生きていけるのか?」という4つの問いに挑む。

要約者にとって特に新鮮だったのは結婚を巡る内容だ。今日、私たちは結婚を「愛の結実したもの」と捉えている。ところが歴史を紐解くと、結婚は「愛」ではなく「経済」のためになされてきたものであったという。

このように、通説とされるものを科学的に崩していく本書は非常に刺激的で、通読にそう多くの時間を要さなかった。人間関係を巡る壮大な論文と捉えることもできるし、人間関係にまつわる自身の知識を迷信から解き放ち、より正確なものへとアップデートするための実用書としても読める一冊だと感じた。

著者

エリック・バーカー(Eric Barker)
大人気ブログ“Barking Up The Wrong Tree”の執筆者。『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙、『タイム』誌などが度々その記事を掲載し、著述家として確固たる地位を築く。世の中のありとあらゆる成功ルールを検証した『残酷すぎる成功法則』は、デビュー作にして全米ベストセラーになり、邦訳も累計15万部を突破。続編の本書もUSAトゥデイのランキングなどでベストセラーになり、話題をさらっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    第一印象の正しさは7割程度とされる。その正確性を高めるには「速断を避けること」と「対象と心理的な距離を置くこと」、「反対の立場で考えてみること」が効果的だ。
  • 要点
    2
    友情は幸福と健康に大きく貢献することがわかっている。それにもかかわらず、友だちとの関係を維持する努力は後回しにされがちだ。
  • 要点
    3
    「ひとは一人では生きていけない」と言われるが、孤独は主観的な感情であり、実際に一人でいるかどうかは重要ではない。

要約

人間関係に「マスターキー」はあるのか?

傾聴がもたらすもの

強盗が店員を人質に取り、コンビニに立てこもっている。対応しているのは、ニューヨーク市警の人質交渉チームだ。

凄い剣幕でまくしたてる犯人に対して、交渉官は「苛立っているようだな」と言葉をかける。傾聴の基本的なテクニックである「ラベリング」だ。強い感情を抑制するとともに、共感を示して相手との関係を構築する効果もあるとされる。

さらに交渉官は、相手の言葉を繰り返す「ミラーリング」も活用する。そうして相手の話を長引かせながら、情報を引き出し、徐々に関係を構築して、望ましい方向へと誘導していくのだ。

慎重なコミュニケーションが功を奏し、会話のトーンが徐々に軟化して、見事人質を救出した――。

ニューヨーク市警の訓練施設で行われた、人質交渉の模擬訓練の一幕だ。その場に同席していた著者は、傾聴の威力を目の当たりにして、「人とのコミュニケーションのマスターキーは傾聴だ」と確信した。家庭での人間関係を改善する方法が、ようやく見つかったのだ。

人間関係の「常識」は誤りだらけ
PeopleImages/gettyimages

確信を得た著者に対し、交渉官は「傾聴は家族には効かない」と言い放った。人命を救えるのに結婚生活は救えない? そんなことがあり得るのだろうか。

だが、交渉官の言うことは正しかった。傾聴は、人質交渉のように、実践者が問題から一定の距離を置いている場合にのみ有効なのだ。ワシントン大学の心理学名誉教授、ジョン・ゴットマンが行った調査では、傾聴を実践できた数少ないカップルにおいても、効果はごく短期間しか持続しなかった。立てこもり犯との交渉とは違い、結婚生活はたいてい長く続く。

人間は複雑な生きものだ。そんな複雑な存在に使える、シンプルで普遍的なマスターキーなどあるはずがない。傾聴だけでなく、同様に人への対処法として「当然」とされている多くのものが、実は間違っていることも多いのだ。

著者は本書で、私たちにとって馴染みのある4つの常識を検証していく。

【必読ポイント!】 「人は見た目で判断できる」のか?

第一印象は7割正しい

多くの研究で、第一印象は初対面の場だけでなく、その後も長きにわたって大きな影響を与えることがわかっている。実際、選挙の候補者の顔写真を人びとに見せ、「どの候補者が有能に見えるか」と尋ねる調査をすると、首位になる候補者が70%の確率でわかるという。また、採用担当者が求職者に抱く面接前後の印象には相関関係があるとされる。

相手の見た目や行動から人となりを判断する能力の精度は70%に達する。ここで注意したいのは、70%であって100%ではないということだ。

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要約公開日 2023.08.10
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