天才たちは新しいアイデアを突如ひらめき、数々の困難を乗り越え、偉業を成し遂げる――。はたして本当にそうだろうか。
20世紀最大の芸術家ピカソは、同時代の画家マティスとアフリカのビリ人による彫像を「ネタ元」にしてキュビズムの旗手となった。アメリカのナンシー・ジョンソンは、当時すでに存在した単純な技術を複数組み合わせることで、アイスクリームの製造方法に革命を起こした。また、ヘンリー・フォードは、食肉処理場の肉の解体から着想を得た組立ラインと、速乾性塗料を製造工程に組み入れて、自動車の販売価格を大幅に押し下げた。
彼らのような天才たちは、「新しいアイデアを突如ひらめいた」わけではない。彼らがやったのは、すでにある技術を学び、何が有用かを見抜いて選び取り、新しい組み合わせを生み出すという、「戦略的模倣」である。イノベーションとはあくまでも、「古いアイデアの新規かつ有用な組み合わせ」によって複雑な課題を解決する行為であることを、心に刻んでおこう。もちろん、戦略的模倣は一握りの天才の専売特許ではない。脳の仕組みを理解し、適切な段取りを経れば、誰でもイノベーションを起こすことができる。その適切な段取りこそが、Think Biggerだ。
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