教養としてのドラッカー

「知の巨人」の思索の軌跡
未読
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「知の巨人」の思索の軌跡
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未読
教養としてのドラッカー
著者
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2023年05月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「20世紀の知の巨人」と称されるピーター・ドラッカー。本書は、1979年にドラッカーにインタビューして以来、30余年にわたって交流を続けてきた著者が、ドラッカーの人となりや思想の全体像を描き出した一冊である。

ドラッカーは、経済学、社会学、経営学など特定のジャンルの専門家ではなく、それらを超えて社会全体を観察し、独自の洞察を得るために絶えず学び続けた思索家であった。また、組織における「マネジメント」の重要性を説いたことはあまりに有名で、『マネジメント』『プロフェッショナルの条件』に代表されるドラッカーの著作は、いまもビジネスパーソンのバイブルである。それと同時に、人間の可能性や個々の人間が自己の人生をデザインする「自己マネジメント」の重要性も強調している。

ドラッカーの言葉は、2005年に95歳で亡くなってからも色褪せることなく、多くの人に影響を与えている。2009年に刊行された岩崎夏海の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』が、一大ブームを巻き起こしたことは記憶に新しい。

本書では、ドラッカーの“押しかけ弟子”である著者が、“恩師”から直接聞いた言葉やエピソードを交えることで、ドラッカーの人間性をより鮮やかに描き出している。本書を通して「知の巨人の思想」に触れることで、これまで見えてこなかった新しい世界を開くきっかけが得られるだろう。

ライター画像
藤平泰徳

著者

小島明(こじま あきら)
元・日本経済新聞社専務・論説主幹。2023年3月まで政策研究大学院大学理事・客員教授を務める。
1942年横浜市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業後、日本経済新聞社に入社。編集局外報部・経済部でマクロ経済と経済・産業政策を担当。97年取締役・論説主幹、2003年取締役専務。04年日本経済研究センター会長。慶應義塾大学(大学院商学研究科)教授、一橋大学、東京工業大学、早稲田大学の講師、内閣府男女共同参画会議議員、司法制度改革会議議員などを歴任。日本記者クラブ賞、ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。新聞協会賞を共同受賞。現在、(一財)国際経済連携推進センター理事長、(公財)本田財団理事・国際委員長、日本経済新聞社客員、(公財)イオンワンパーセントクラブ理事、(一財)地球産業文化研究所評議員。
著書に『調整の時代 日米経済の新しい構造と変化』(集英社)、『グローバリゼーション』(中公新書)、『日本の選択 〈適者〉のモデルへ』(NTT出版)、『「日本経済」はどこへ行くのか(1)~(2)』、『平成経済徒然草』(日本経済新聞出版社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    1979年の春、著者は日本経済新聞社の記者としてドラッカーへのインタビューの機会を得た。それから30余年、著者とドラッカーの交流は続いた。
  • 要点
    2
    ドラッカーは1976年に発表した『見えざる革命』で将来の少子高齢化を指摘したが、若者文化が全盛だった当時、この主張は受け入れられなかった。
  • 要点
    3
    マネジメントは企業を含むあらゆる組織に必要であり、その機能は社会的なものである。企業の目的は「顧客の創造」であり、利益はそれを達成するための手段である。
  • 要点
    4
    若者が日本社会に多様性をもたらし、未来を変えていくだろう。

要約

ドラッカーとの出会い

30余年の交流の始まり

著者がドラッカーと初めて出会ったのは、1979年の春だった。日本経済新聞社のニューヨーク支局で記者生活を送っていた著者は、海外の高齢化問題の動向と議論を調査するため、ピーター・ドラッカーへのインタビューをすることになった。

ドラッカーはこのインタビューの3年前、高齢化問題を取り上げた『見えざる革命』を発表していた。この本は、若者文化が中心となっていた当時のアメリカ社会と対照的な内容であったことから、批判の対象となっていた。ドラッカーには語りたいことが多くあったのだろう。カリフォルニア州の小都市クレアモントの自宅に訪れた著者を暖かく迎え入れ、数時間に渡ってインタビューに応じてくれた。

これが、著者とドラッカーの以後30余年続く交流の始まりだった。それからはドラッカーが日本を訪れるたびに、著者はインタビューをしたり食事をともにしたりするようになった。著者は、このクレアモントでの出会いを「幸運」であったと振り返る。

日本への提言
kokouu/gettyimages

ドラッカーが2005年に亡くなってからも、彼が残した多くの著作は世界中で読み続けられている。とくに、組織のあり方や運営の仕方について長期的、本源的、総合的な視点から説いた『マネジメント』は、世界の、とりわけ日本の経営者のバイブル的存在となっている。

企業経営においてドラッカーが強く主張したのは、人はコストではなく「資産」であるということだ。企業は人という資産を活かすことで生産性をあげ、イノベーションを生み、社会に貢献することができる。そのためには、人の「強み」を活かすことが大切だと終始一貫して論じている。

日本企業は長らく「長期経営」「人材重視」の経営を行ってきたが、バブル景気崩壊後は収益の回復・確保のために人件費を削減し、非正規雇用者を大量に生み出した。あれから30年以上経った今も、人を「コスト」とする発想から抜け出せていない。

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要約公開日 2024.01.14
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