人に動いてもらいたいなら、相手が欲しがっているものを与えることだ。心理学者ジグムント・フロイトによれば、人の行動のすべては「性の衝動」と「偉くなりたい願望」に集約されるという。また、アメリカの偉大な哲学者ジョン・デューイ教授は、「人間の持つ最も根強い衝動は、“重要人物たらんとする欲求”だ」と主張する。
「自己重要感」は、動物にはない人間固有の特性だ。流行のファッションを身にまとったり、新車を乗り回したりするのもこの欲求に突き動かされた結果である。
自己の重要感を満足させる方法は人によって異なるが、その方法がわかればその人物がどのような性格や嗜好を持つのか、ある程度わかるだろう。アメリカの実業家チャールズ・シュワブは「他人の長所を伸ばすには、ほめることと、励ますことが何よりの方法だ。上司から叱られることほど、向上心を害するものはない」と言っている。
では、あなたはどうだろうか。仕事場、家庭で相手に称賛や励ましの言葉をかけているだろうか。自分の欲から離れ、相手の長所を考えよう。そして、それに対して惜しみない賛辞を与えよう。きっと相手はそれをいつまでも忘れないだろう。
人を動かす方法、それは人の好むものに着眼し、それを手に入れる方法を教えることだ。
息子に煙草を吸わせたくないと思えば説教してはならない。代わりに「野球の選手になれなくなる」「100m競争に勝てなくなる」と説明するのだ。
著者が出会った一人の男性の例を紹介しよう。その男性の息子が「幼稚園に行きたくない」とごねている。親としては「幼稚園に行きなさい」と怒鳴りつけたら、登園させることはできるだろう。だが、それでは幼稚園を好きにさせることはできない。
そこで、その男性は妻と一緒に、歌を歌う、絵を描くなど幼稚園でやるような面白いことをリストにした。そして、男性は妻と一緒にそれを楽しそうに実演したのだ。すると息子は興味津々に「自分も仲間に入れて」と言い出す。しかし、男性は「幼稚園で遊び方を教わってからじゃないとだめだよ」と言ったのだ。
その翌朝何が起こったか。説教や脅しなしで、その子は幼稚園に行きたいと自発的に言い出したのだ。
このように、人に行動を起こしてもらいたければ、「どうすれば相手を焚きつけられるか」を自分に問うことが大切である。
他人の関心を引くために、見当違いな努力ばかりを続ける人は少なくない。だが実際には、人は他人のことにほとんど関心を持っておらず、四六時中、自分のことを気にしている。大勢が写っている集合写真を見るときにまずは自分の顔を探すというのはその最たる例だろう。
自分に関心を引こうとしてばかりでは、真の友人はできない。心理学者のアルフレッド・アドラーも「他人のことに関心を持たない人は、苦難の人生を歩まねばならず、他人に対しても大きな迷惑をかける」と言っている。
著者は、友達から誕生日を聞き出すよう日頃から心がけていたという。相手の誕生日を聞いたら、それを忘れないうちに手帳に記入する。そして、その日が来たらお祝いの手紙を出すそうだ。この方法はとても効果的で、「誕生日を覚えてくれたのは世界であなただけだ」という場合も少なくない。
人に好かれ、真の友情を育みたいのなら、相手に誠実な関心を寄せることが大切だ。
所作や動作は、言葉よりも雄弁だ。犬が飼い主を見て喜んで近づいてくるのは、まさに犬がかわいがられるゆえんである。
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