人間失格

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革新性
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おすすめポイント

文豪・太宰治の代名詞であり、自伝的小説とも囁かれる『人間失格』。本作の連載一回目が発表されたその一カ月後、太宰は愛人と玉川上水に入水自殺をする。まるで小説そのもののセンセーショナルな生き様は、いまなお私たちの心をざわつかせる。

本作は、最初から最後まで主人公・大庭葉蔵の「ひとり語り」で進む。「人間の生活というものがわからない」という葉蔵の心象風景はいびつで、「普通」とはかけ離れている。読者は一定の距離を取りながら葉蔵の頭の中を眺めるも、読み進めるうちに自分と葉蔵がシンクロして、じりじりと「人間失格」に近づいていくような空おそろしさを感じるだろう。

葉蔵の行動は一見めちゃくちゃだが、一貫して「自分は普通の人間ではない」という苦悩があり、そこからの解脱を求めているように見える。人は多かれ少なかれ“おかしな”部分をもっていると思うが、まっとうな社会生活を送るためそれを隠して生きている。『人間失格』が支持されてきた所以は、そんな人間心理に訴えるものがあるからではないだろうか。

要約では物語の骨子となる部分を抽出し、簡潔にまとめた。そのため、本作の醍醐味である「えぐるような心情描写」は最低限に抑えている。作品自体は短く、表現も古くなくさらりと読めてしまう。この機会に稀代の名作に触れてみてはいかがだろうか。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

太宰治(だざい おさむ)
1909年、青森県金木村生まれ。本名は津島修治。1935年(昭和10)年『逆行』が芥川賞候補となり、翌年初の創作集『晩年』を刊行。自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながら、亡くなる直前まで精力的に作品を発表する。1948(昭和23)年6月、山崎富栄と玉川上水で入水自殺。主な作品に『斜陽』『ヴィヨンの妻』『走れメロス』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    東北の裕福な家庭に生まれた大庭葉蔵は、幼少期より「人の営み」というものがまったくわからず、人と会話もできなかった。そこで、「道化」を演じて生きていくことを考える。だが体育の時間に竹一に道化を見破られ、激しく動揺する。
  • 要点
    2
    上京した葉蔵は、堀木から酒とタバコと女を教わる。葉蔵は銀座のカフェの女・ツネ子と入水自殺を図るも、女だけが死んでしまう。
  • 要点
    3
    タバコ屋の娘・ヨシ子と結婚した葉蔵は人並みの幸せを得ようとしていたが、ある事件をきっかけにアルコールに溺れ、薬物中毒になる。葉蔵は人里離れた病院に入れられ、ついには「人間失格」となる。

要約

道化

人の営みがわからない

恥の多い生涯を送ってきた。

自分には人の営み、人間の生活というものがさっぱりわからない。自分と世のすべての人たちがもつ幸福の観念は、甚だ食いちがっているような不安に襲われる。自分は東北の裕福な家庭の生まれで、小さい頃から「仕合わせ者だ」と言われてきたが、まわりの人たちのほうがずっと安楽なように見える。

自分には、他人の苦しみの性質や程度がまるで見当つかない。みんな歩きながら何を考えているのだろう? 夜はどんな夢を見て、朝は爽快なのだろうか? 人間はめしを食うために生きていると聞いたような気がするが、金のためということもあるのか……? 考えれば考えるほどわからなくなり、不安と恐怖に苛まれる。

自分は他人とほとんど会話ができない。何をどう言っていいかわからないからだ。

「道化」として生きることを決める
flyingv43/gettyimages

そこで、道化になることを考えた。自分の懊悩は胸の奥に隠して、表面的には絶えず笑顔をつくり、ひたすら無邪気な楽天家を装って「道化」を演じるのだ。何でもいいから笑わせておけば、いわゆる「生活」の外にいても気にされないのではないだろうか。自分は空気のような存在だ。自分は道化になって、家族や下働きのものたちに必死にサービスをした。

自分は勉強が「できた」ようで、成績は操行以外すべて十点だった。受験勉強はろくにしなかったが、中学には無事入学することができた。

中学でも例の道化を演じ、日に日にクラスの人気を得ていった。以前よりも演技はのびのびとして、教師も「大庭さえいなければ、いいクラスなんだがな」と口では言いながらも笑っていた。もはや自分の正体を完全に隠蔽できたのではないか、とほっとしていた矢先、背後から突き刺される事件が起きた。

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要約公開日 2024.01.26
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